純愛コンプレックス
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◯自宅
真白:クッションを抱きしめてソファに横になっている。
純『返事……いつでもいいから、考えてみて……ください』
純に告白された場面を思い浮かべる。
真白【好きって、告白われたの初めてだなぁ】
真白【いや、言われたことも言ったこともあるけどーーその人に対する気持ちを表す言葉ってよりかは、関係を肯定する言葉っていうか、気持ちを盛り上げる為に使う言葉っていうか】
過去の彼氏達に軽く言われた「好き」を思い出す。
真白【全然違うーー】
・純の真剣な顔
真白【初めて聞いた言葉みたいーー】
真白【自分のことを好きって言われるのって、こんなにーー心がぶわぁぁってなるんだ】
真白「わーーー」
かああああと真っ赤になった顔を両手で覆って悶絶する。
真白【どぉしよぉ……】
稀莉「真白ちゃん?!」
すぐ近くでパソコンでゲームをしていた稀莉がびっくりして振り向く。
稀莉「どうしたの?」
真白「なんでもない!大丈夫!」
真白【告白されて付き合うって今までなかったんだけどーーどうしたらいいの。私って佐伯くんのこと好きなの?
ていうか、佐伯くん、私のどこが良くて好きになってくれたのーー?】
真白(洋ちゃんには絶対相談したくないけど、稀莉ちゃんの恋愛もあんまり参考にならなそうだしなぁ)
稀莉はリアルで会ったことのないゲーム仲間と最近いい感じらしい。
真白【考えてって言われてもーー考えて、答えが出るもの?】
真白「稀莉ちゃん、私のどこが好き?」
稀莉「全部」
真白「惚れるっ」がばっと稀莉に抱きつく。
◯学校
真白:自分の席に座って、純をこっそりと見ている。
・男子と楽しそうに話していた純が週番の女の子が黒板の上の方に届かないのに気付いて駆け寄り、代わりに消してあげている。
・お礼を言っている女の子に笑顔で答える純。
真白【うっ、眩しい】
・休み時間の教室
真白の席に友達が集まって来ている。
紗理 おとなしめの外見。眼鏡。胸の辺りまでのロングヘア。
朋美 身長高め。グループのお姉さん的存在。ショートボブ。活発な雰囲気。
真白【そういえば、あんまりカップルらしき男女を見ないけど、ここの恋愛事情ってどうなってるんだろ】
【前の学校で仲良かった子はだいたいいつも彼氏がいて、いなくても彼氏候補的な人が常にいるのが普通だったけど】
目の前で話している朋美と紗理をじっと見つめる。
朋美「どしたー? 真白」
よしよしと真白の頭を撫でる。
真白をとっても可愛がっていて、真白に対していつも過保護なお姉さんのような態度。
真白「えっと……」
真白「紗理ちゃんと朋美ちゃんは、彼氏って、いるの?」
朋美「私は生まれてこの方、ひとっりもいませーん」
真白「そ、そっか」
【やっぱり、前の学校の普通は常識とはかけ離れてるのか】
朋美「紗理は堀田と付き合ってるよ。隣のクラスの。分かる?」
真白「えっ! そうだったの?」
紗理「まぁ、腐れ縁ですが」照れくさそうに笑う
朋美「らぶらぶのくせに」
紗理「真白は? 前の学校でいたの?」
朋美「真白、絶対モテるっしょ!」
紗理「でも、手を触れてはいけない領域って感じで男子は近寄れないかも」
朋美「わっかる!聖域だよね」
真白:元彼三人いる。
真白「えっと……いま、付き合ってる人はいないんだけど……」
真白【思い切って聞いてみよう!】
真白「佐伯くん、て……」
紗理&朋美「おおおー?」
朋美「佐伯って、うちクラスのあの佐伯だよね?」
ちらっと純の席を見て、本人がいない事を確認する。
紗理「真白、仲良かった?」
真白「最近、ちょっと話すようになって」
紗理「えーいつのまにー」
朋美「いーじゃんいーじゃん。お似合いだよ」
紗理「うんうん」
朋美「佐伯は、付き合ってる子いないよね?」
告白されたことを知らないので真白の片想いだと思って話を進める。
紗理「多分。聞いたことない」
朋美「一、二年の時も、ずっといなかったんじゃない? 中学は知らんけど」
真白「ほんとに……?」
あんなにかっこいいのに信じられない。
朋美「モテてはいるけど」
紗理「あのビジュだからねー。性格も良いし。でも、女の子といるのってあんま見ないよ。仲良い女の子とかもいないよね」
朋美「うん。好きな子もいなさそう。佐伯ってなんか女子に関心薄そうな感じ」
紗理「分かるかも。恋愛に興味なさそう」
朋美「でも、真白ならいける!」
紗理「うんうん!」
朋美「真白、男に免疫ないから、まずは友達として仲良くなるとこからだね。頑張ろ!」
紗理「協力するよ!」
真白「う、うん。ありがと」
真白【なんか、知れば知るほど、私とは違う世界の人な気がーー】
真白【ほんとにどうして、佐伯くんは私なんだろ】
◯家
洋介「高校の頃に付き合った人数? 二人だったっけ」
・結局洋介に相談している。
真白【うっそ……洋ちゃんより?】
チャラいと思っていた洋介よりも付き合った人数が多くて、がーんっとショックを受けた顔で打ちひしがれる。
洋介「お前の元カレは五人?だっけ」
真白「……三人」
洋介「サバ読むんじゃねー」
真白「読んでないもん!……ちゃんと彼氏と言えるのはそのくらい」
洋介「え、お前、付き合ってない男としちゃうタイプ?」引いた顔
真白「そうじゃなくって、付き合ってるって思ってたら、向こうは違ったーーみたいなの、とか?」言葉尻が萎んでいく。
洋介「付き合う時って好きとか言ったり言われたりして、気持ち確かめ合って始めるもんじゃねぇの?」
→意外に恋愛面は真面目な男
真白「いや、なんかそれも曖昧というか……好きで付き合うってより、好きになれるかまずは付き合ってみるーーみたいな感じで始まるというか」
洋介「東京の子、おっそろし」
真白「好きってどういうのだっけーーどうやって、みんな好きって分かるの?」頭を抱える。
洋介「ははっ、百戦錬磨のパイセンがなに言ってんすかー」
真白:ふざけてくる洋介をクッションで叩く。
洋介「考えなくても、好きって言われてそんなに浮かれてんなら、答えはもう出てるんじゃね」
真白「うかれてる……?」
悩んでるのだが?と首を捻る。
洋介「うぜぇくらい」
洋介「でもさーそいつが好きなのって、この真白だろ?」
真白を指差す。
真白「どの私?」
洋介「今の真面目ちゃんキャラの真白ちゃん。百戦錬磨だった頃のお前、知ってんの?」
真白:目をでっかく見開く。
真白【そうだったーーー】
真白【そうだよ、佐伯くんが好きって言ってくれたのはーーみんなに純粋だと思われている私だ】(百戦錬磨だったことはないけど)
真白「……本当の私を知ったら、好きな気持ちも冷めちゃうか」
「まぁギャップ萌えとかあるから大丈夫じゃね」と洋介に適当に慰められる(面白がられる)
◯放課後
ひとりで下駄箱に靴を仕舞っている。
真白【ちゃんと、断らないとなのに】
会ったら返事をしないといけないから、最近は昼休み、体育館には行けていなかった。
・体育館で一緒にバレーをしている場面。
【断ったら、もう、あんなふうに笑って貰えないのかな】
純「清流、ちょっといい?」
突然声を掛けられ驚いて振り向くと、すぐ近くに純が立っていた。
まさに純のことを考えていた真白は緊張と動揺で固まる。
純「明後日、最後の試合で……そんな大きな大会でもないんだけど」
純「良かったら……見にきてください」
真白「行く……っ」
真白【断るって決めたのに、行ってどうするのーー】
【でもーー】
頑張って練習していた純の姿を思い浮かべる。
真白【これが最後。……終わったら、ちゃんと断るから】
純「やったっ……」
心から喜んでいるのが伝わる純の眩しい笑顔を見て切ない気持ちになる。
真白【やっぱり、佐伯くんの笑った顔って……いいなぁ】
【綺麗な心が伝染するみたいに、世界がきらきら光って見える】
◯土曜日、県の総合体育館
真白「ちょっと、何で洋ちゃんも来るの。車で待っててよ」周りに聞こえないように顔を近づけてこそこそと話すふたり。
周りにはまるで恋人のように見えているのに気づかない。
洋介「やだよ、暇じゃん。人を足に使ったんだから楽しませろ」
洋介「で、どれ? お前に告った男は」
真白(何で知ってんの!?)と目を見開く。
洋介「あ、やっぱこの中にいるんだ」にやっと楽しげに笑う。
バレー部男子1「清流さんだ」
バレー部男子2「えっ、誰の応援? 俺?」
真白:目が合ったので控えめに微笑んでぺこっとお辞儀をする。
バレー部男子2「え、可愛い。女神か」真顔
バレー部男子1「俺達の勝利の女神……今日、勝つ気しかしねぇわ」真顔
バレー部男子2「まじでな」
洋介「お前のキャラ面白すぎだろ」
真白『キャラとかいうな』小声。笑いを堪えてる洋介の足を蹴る。
真白(あっ……)
純と目が合って反射的に逸らしてしまう。
洋介「あれかー。なるほどなるほど」
真白(なんで分かっちゃうの!?)
試合が始まり、早速純が点を決める。
洋介「おーかっこよ」
試合に夢中になっている真白の耳には洋介の声は聞こえていない。
真白「頑張れっ……」
手すりを握り締めて、祈る気持ちで応援する。
◯場面変わって体育館の外
洋介「惜しかったなぁー」
真白「うん」
目が勝手に純を探してしまうが、バレー部の集団の中には見当たらない。
真白「洋ちゃん、先に帰ってて」
洋介「は? お前、どうやって帰るんだよ」
真白「バスで帰る!」
走って体育館の裏に行くと、純が扉前の段差に座って蹲っていた。
そっと近づくと気配に気付いた純が顔を上げ、気まずそうに顔を晒す。
純の目には薄ら涙が浮かんでいる。
純「……見なかったことにして」
顔を背けてジャージの袖で涙を拭う。
真白:恐る恐る隣に座る。
純「……俺、清流にいつも情けないとこしか見られてないわ」
純「せっかく来てくれたから、かっこいいとこ見せたかったんだけど。練習にも付き合って貰ったのにあっさり負けて、ごめん」
真白「すっごいかっこ良かった!!」
・今日しかこういう場面に出くわしたことないはずなのに、「いつも」と言った純の言葉に少し引っかかる。
真白「いっぱい練習してたスパイクもっ、サーブもいっぱい決まっててすごかったよ! 佐伯くんのスパイクがいっっちばん綺麗だった」
真白「……ありがとう」
大切な試合に呼んでくれたこと、好きだと言ってくれたこと、楽しい時間をたくさんくれたこと、純への想いがふっと溢れて漏れた。
純「ははっ、なんで清流がお礼いうの」
真白「えっと、試合、呼んでくれて。ありがとう」
純「こちらこそ、ありがと。清流はやっぱり変わらないね。いつもやさしい」
純「振られたけど、ちゃんと言えて良かった」
真白「え」
真白(断ろうと思ってから、そうなんだけど)
純「……一緒にいたの彼氏、だよね?」
真白(彼氏……って)
真白「あれは従兄!!」
思わず大きな声を出してしまい、はっとして声を落とす。
真白「車で送ってもらったの。体育館、駅から遠かったから」
純「そうなんだ……」
純「良かった」
ほっとした顔で笑う純を見て、真白の胸に熱いものが込み上げてくる。
純「帰ろうか。送ってくから、ちょっと待ってて、部の奴らに言ってくる……」
真白:部員のいる方へ行こうとする純のジャージの裾を咄嗟に掴んで引き留める。
真白「あのっ、この前の、返事……っ」
純が緊張した面持ちでごくっと息を飲む。
真白「私も……っ」
真白【佐伯くんが好きになったのは、本当の私じゃない】
真白【でもーー】
真白「私も、好きです」
純「……めちゃくちゃ嬉しい」
真白をまっすぐに見て、幸せそうに笑う。
真白も泣きそうな顔で笑った。
真白【諦めたくない……】
真白【だって、こんな気持ちになったの、初めてなんだもん】
真白:クッションを抱きしめてソファに横になっている。
純『返事……いつでもいいから、考えてみて……ください』
純に告白された場面を思い浮かべる。
真白【好きって、告白われたの初めてだなぁ】
真白【いや、言われたことも言ったこともあるけどーーその人に対する気持ちを表す言葉ってよりかは、関係を肯定する言葉っていうか、気持ちを盛り上げる為に使う言葉っていうか】
過去の彼氏達に軽く言われた「好き」を思い出す。
真白【全然違うーー】
・純の真剣な顔
真白【初めて聞いた言葉みたいーー】
真白【自分のことを好きって言われるのって、こんなにーー心がぶわぁぁってなるんだ】
真白「わーーー」
かああああと真っ赤になった顔を両手で覆って悶絶する。
真白【どぉしよぉ……】
稀莉「真白ちゃん?!」
すぐ近くでパソコンでゲームをしていた稀莉がびっくりして振り向く。
稀莉「どうしたの?」
真白「なんでもない!大丈夫!」
真白【告白されて付き合うって今までなかったんだけどーーどうしたらいいの。私って佐伯くんのこと好きなの?
ていうか、佐伯くん、私のどこが良くて好きになってくれたのーー?】
真白(洋ちゃんには絶対相談したくないけど、稀莉ちゃんの恋愛もあんまり参考にならなそうだしなぁ)
稀莉はリアルで会ったことのないゲーム仲間と最近いい感じらしい。
真白【考えてって言われてもーー考えて、答えが出るもの?】
真白「稀莉ちゃん、私のどこが好き?」
稀莉「全部」
真白「惚れるっ」がばっと稀莉に抱きつく。
◯学校
真白:自分の席に座って、純をこっそりと見ている。
・男子と楽しそうに話していた純が週番の女の子が黒板の上の方に届かないのに気付いて駆け寄り、代わりに消してあげている。
・お礼を言っている女の子に笑顔で答える純。
真白【うっ、眩しい】
・休み時間の教室
真白の席に友達が集まって来ている。
紗理 おとなしめの外見。眼鏡。胸の辺りまでのロングヘア。
朋美 身長高め。グループのお姉さん的存在。ショートボブ。活発な雰囲気。
真白【そういえば、あんまりカップルらしき男女を見ないけど、ここの恋愛事情ってどうなってるんだろ】
【前の学校で仲良かった子はだいたいいつも彼氏がいて、いなくても彼氏候補的な人が常にいるのが普通だったけど】
目の前で話している朋美と紗理をじっと見つめる。
朋美「どしたー? 真白」
よしよしと真白の頭を撫でる。
真白をとっても可愛がっていて、真白に対していつも過保護なお姉さんのような態度。
真白「えっと……」
真白「紗理ちゃんと朋美ちゃんは、彼氏って、いるの?」
朋美「私は生まれてこの方、ひとっりもいませーん」
真白「そ、そっか」
【やっぱり、前の学校の普通は常識とはかけ離れてるのか】
朋美「紗理は堀田と付き合ってるよ。隣のクラスの。分かる?」
真白「えっ! そうだったの?」
紗理「まぁ、腐れ縁ですが」照れくさそうに笑う
朋美「らぶらぶのくせに」
紗理「真白は? 前の学校でいたの?」
朋美「真白、絶対モテるっしょ!」
紗理「でも、手を触れてはいけない領域って感じで男子は近寄れないかも」
朋美「わっかる!聖域だよね」
真白:元彼三人いる。
真白「えっと……いま、付き合ってる人はいないんだけど……」
真白【思い切って聞いてみよう!】
真白「佐伯くん、て……」
紗理&朋美「おおおー?」
朋美「佐伯って、うちクラスのあの佐伯だよね?」
ちらっと純の席を見て、本人がいない事を確認する。
紗理「真白、仲良かった?」
真白「最近、ちょっと話すようになって」
紗理「えーいつのまにー」
朋美「いーじゃんいーじゃん。お似合いだよ」
紗理「うんうん」
朋美「佐伯は、付き合ってる子いないよね?」
告白されたことを知らないので真白の片想いだと思って話を進める。
紗理「多分。聞いたことない」
朋美「一、二年の時も、ずっといなかったんじゃない? 中学は知らんけど」
真白「ほんとに……?」
あんなにかっこいいのに信じられない。
朋美「モテてはいるけど」
紗理「あのビジュだからねー。性格も良いし。でも、女の子といるのってあんま見ないよ。仲良い女の子とかもいないよね」
朋美「うん。好きな子もいなさそう。佐伯ってなんか女子に関心薄そうな感じ」
紗理「分かるかも。恋愛に興味なさそう」
朋美「でも、真白ならいける!」
紗理「うんうん!」
朋美「真白、男に免疫ないから、まずは友達として仲良くなるとこからだね。頑張ろ!」
紗理「協力するよ!」
真白「う、うん。ありがと」
真白【なんか、知れば知るほど、私とは違う世界の人な気がーー】
真白【ほんとにどうして、佐伯くんは私なんだろ】
◯家
洋介「高校の頃に付き合った人数? 二人だったっけ」
・結局洋介に相談している。
真白【うっそ……洋ちゃんより?】
チャラいと思っていた洋介よりも付き合った人数が多くて、がーんっとショックを受けた顔で打ちひしがれる。
洋介「お前の元カレは五人?だっけ」
真白「……三人」
洋介「サバ読むんじゃねー」
真白「読んでないもん!……ちゃんと彼氏と言えるのはそのくらい」
洋介「え、お前、付き合ってない男としちゃうタイプ?」引いた顔
真白「そうじゃなくって、付き合ってるって思ってたら、向こうは違ったーーみたいなの、とか?」言葉尻が萎んでいく。
洋介「付き合う時って好きとか言ったり言われたりして、気持ち確かめ合って始めるもんじゃねぇの?」
→意外に恋愛面は真面目な男
真白「いや、なんかそれも曖昧というか……好きで付き合うってより、好きになれるかまずは付き合ってみるーーみたいな感じで始まるというか」
洋介「東京の子、おっそろし」
真白「好きってどういうのだっけーーどうやって、みんな好きって分かるの?」頭を抱える。
洋介「ははっ、百戦錬磨のパイセンがなに言ってんすかー」
真白:ふざけてくる洋介をクッションで叩く。
洋介「考えなくても、好きって言われてそんなに浮かれてんなら、答えはもう出てるんじゃね」
真白「うかれてる……?」
悩んでるのだが?と首を捻る。
洋介「うぜぇくらい」
洋介「でもさーそいつが好きなのって、この真白だろ?」
真白を指差す。
真白「どの私?」
洋介「今の真面目ちゃんキャラの真白ちゃん。百戦錬磨だった頃のお前、知ってんの?」
真白:目をでっかく見開く。
真白【そうだったーーー】
真白【そうだよ、佐伯くんが好きって言ってくれたのはーーみんなに純粋だと思われている私だ】(百戦錬磨だったことはないけど)
真白「……本当の私を知ったら、好きな気持ちも冷めちゃうか」
「まぁギャップ萌えとかあるから大丈夫じゃね」と洋介に適当に慰められる(面白がられる)
◯放課後
ひとりで下駄箱に靴を仕舞っている。
真白【ちゃんと、断らないとなのに】
会ったら返事をしないといけないから、最近は昼休み、体育館には行けていなかった。
・体育館で一緒にバレーをしている場面。
【断ったら、もう、あんなふうに笑って貰えないのかな】
純「清流、ちょっといい?」
突然声を掛けられ驚いて振り向くと、すぐ近くに純が立っていた。
まさに純のことを考えていた真白は緊張と動揺で固まる。
純「明後日、最後の試合で……そんな大きな大会でもないんだけど」
純「良かったら……見にきてください」
真白「行く……っ」
真白【断るって決めたのに、行ってどうするのーー】
【でもーー】
頑張って練習していた純の姿を思い浮かべる。
真白【これが最後。……終わったら、ちゃんと断るから】
純「やったっ……」
心から喜んでいるのが伝わる純の眩しい笑顔を見て切ない気持ちになる。
真白【やっぱり、佐伯くんの笑った顔って……いいなぁ】
【綺麗な心が伝染するみたいに、世界がきらきら光って見える】
◯土曜日、県の総合体育館
真白「ちょっと、何で洋ちゃんも来るの。車で待っててよ」周りに聞こえないように顔を近づけてこそこそと話すふたり。
周りにはまるで恋人のように見えているのに気づかない。
洋介「やだよ、暇じゃん。人を足に使ったんだから楽しませろ」
洋介「で、どれ? お前に告った男は」
真白(何で知ってんの!?)と目を見開く。
洋介「あ、やっぱこの中にいるんだ」にやっと楽しげに笑う。
バレー部男子1「清流さんだ」
バレー部男子2「えっ、誰の応援? 俺?」
真白:目が合ったので控えめに微笑んでぺこっとお辞儀をする。
バレー部男子2「え、可愛い。女神か」真顔
バレー部男子1「俺達の勝利の女神……今日、勝つ気しかしねぇわ」真顔
バレー部男子2「まじでな」
洋介「お前のキャラ面白すぎだろ」
真白『キャラとかいうな』小声。笑いを堪えてる洋介の足を蹴る。
真白(あっ……)
純と目が合って反射的に逸らしてしまう。
洋介「あれかー。なるほどなるほど」
真白(なんで分かっちゃうの!?)
試合が始まり、早速純が点を決める。
洋介「おーかっこよ」
試合に夢中になっている真白の耳には洋介の声は聞こえていない。
真白「頑張れっ……」
手すりを握り締めて、祈る気持ちで応援する。
◯場面変わって体育館の外
洋介「惜しかったなぁー」
真白「うん」
目が勝手に純を探してしまうが、バレー部の集団の中には見当たらない。
真白「洋ちゃん、先に帰ってて」
洋介「は? お前、どうやって帰るんだよ」
真白「バスで帰る!」
走って体育館の裏に行くと、純が扉前の段差に座って蹲っていた。
そっと近づくと気配に気付いた純が顔を上げ、気まずそうに顔を晒す。
純の目には薄ら涙が浮かんでいる。
純「……見なかったことにして」
顔を背けてジャージの袖で涙を拭う。
真白:恐る恐る隣に座る。
純「……俺、清流にいつも情けないとこしか見られてないわ」
純「せっかく来てくれたから、かっこいいとこ見せたかったんだけど。練習にも付き合って貰ったのにあっさり負けて、ごめん」
真白「すっごいかっこ良かった!!」
・今日しかこういう場面に出くわしたことないはずなのに、「いつも」と言った純の言葉に少し引っかかる。
真白「いっぱい練習してたスパイクもっ、サーブもいっぱい決まっててすごかったよ! 佐伯くんのスパイクがいっっちばん綺麗だった」
真白「……ありがとう」
大切な試合に呼んでくれたこと、好きだと言ってくれたこと、楽しい時間をたくさんくれたこと、純への想いがふっと溢れて漏れた。
純「ははっ、なんで清流がお礼いうの」
真白「えっと、試合、呼んでくれて。ありがとう」
純「こちらこそ、ありがと。清流はやっぱり変わらないね。いつもやさしい」
純「振られたけど、ちゃんと言えて良かった」
真白「え」
真白(断ろうと思ってから、そうなんだけど)
純「……一緒にいたの彼氏、だよね?」
真白(彼氏……って)
真白「あれは従兄!!」
思わず大きな声を出してしまい、はっとして声を落とす。
真白「車で送ってもらったの。体育館、駅から遠かったから」
純「そうなんだ……」
純「良かった」
ほっとした顔で笑う純を見て、真白の胸に熱いものが込み上げてくる。
純「帰ろうか。送ってくから、ちょっと待ってて、部の奴らに言ってくる……」
真白:部員のいる方へ行こうとする純のジャージの裾を咄嗟に掴んで引き留める。
真白「あのっ、この前の、返事……っ」
純が緊張した面持ちでごくっと息を飲む。
真白「私も……っ」
真白【佐伯くんが好きになったのは、本当の私じゃない】
真白【でもーー】
真白「私も、好きです」
純「……めちゃくちゃ嬉しい」
真白をまっすぐに見て、幸せそうに笑う。
真白も泣きそうな顔で笑った。
真白【諦めたくない……】
真白【だって、こんな気持ちになったの、初めてなんだもん】