男装して婚約者を演じていたらお兄様に目をつけられてしまいました
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俺には世界で一番可愛い妹がいる。
どこに出しても恥ずかしくない、慎ましく、美しく、品がよく、才能に満ち溢れた妹だ。そんな妹に両親が結婚話を持ってきたのは彼女が二十歳を迎えた誕生日の日だった。
母も二十代前半で父と結婚していからある程度は予想していたが、当の本人であるルココは予想すらしていなかったようで驚き惑っていた。しかも、どの候補者も三十路を過ぎている。二十歳になったばかりの女性が突然ただの金持ち息子のおじさんの中から結婚相手を見つけろと言われりゃ戸惑うだろう。特にルココは二次元の男性にしか興味がない。美しく、おじさんとて魅力的な容姿を持ち合わせた世界。三次元の現実世界にそんな人が溢れているわけがない。有り余る富と名誉があれば何かしら違ったかもしれないがルココの相手は全員格下でお世辞にも容赦がいいとは言えない。利があるのは会社にのみ。
こんな見合いは会社を継ぐ俺でも見過ごせない。ルココの結婚相手は俺くらいの容姿で、俺くらいルココのことを大事にし、ルココが好きなことに好きなだけ時間を費やせる環境を提供できる相手じゃないとダメに決まっている。俺はルココに見合う男を探すために社内の若手や知り合いを調査していた。そんな中、ルココから大好きな人ができたとの報告があった。
二次元しか興味がなかったルココが現実世界に目を向けたのはよほど父の候補が気に入らなかったのだろう。きっと急いで探したのでろくでもない男を選んだのだろうと思ったが、まさかの美男子。物静かで、華奢だが、ルココが好きそうな容姿だ。だがここで安心してはならない。可愛いルココを騙して金を搾取しようとしている可能性もあるし、大人しいやつに限ってモラハラや暴力を振るったりもする。
慎重に見定めるために初対面で嫌な男を演じた。それでもやつは嫌な顔一つせず、諦めることすらしなかった。その後、何度も彼にあったが、俺がどんなに意地悪しても、張り合っても、揺さぶっても、彼はいつも穏やかに俺たちを見守っていた。ルココを連れて行くデート先も庶民的な場所ばかりだし、ルココへのプレゼントもカッコつけて無理をせずに身の丈にあったものを与えている。そしてそれに満足するルココ。彼らに溢れる富は必要ないのかもしれない。彼の辛抱強さと寛大さに俺の気持ちも変わりつつあったそんな矢先にルココから助けてくれとの電話があった。
その日俺は仕事で遠くにいた。どんなに急いでも一時間はかかる。丸留にも電話が繋がらない。実家の執事にも連絡をして助けに行けるものたちを行かせてはいたが、俺よりも、彼らよりも先にルココを助けたのは白井世奈だった。
俺には世界で一番可愛い妹がいる。
どこに出しても恥ずかしくない、慎ましく、美しく、品がよく、才能に満ち溢れた妹だ。そんな妹に両親が結婚話を持ってきたのは彼女が二十歳を迎えた誕生日の日だった。
母も二十代前半で父と結婚していからある程度は予想していたが、当の本人であるルココは予想すらしていなかったようで驚き惑っていた。しかも、どの候補者も三十路を過ぎている。二十歳になったばかりの女性が突然ただの金持ち息子のおじさんの中から結婚相手を見つけろと言われりゃ戸惑うだろう。特にルココは二次元の男性にしか興味がない。美しく、おじさんとて魅力的な容姿を持ち合わせた世界。三次元の現実世界にそんな人が溢れているわけがない。有り余る富と名誉があれば何かしら違ったかもしれないがルココの相手は全員格下でお世辞にも容赦がいいとは言えない。利があるのは会社にのみ。
こんな見合いは会社を継ぐ俺でも見過ごせない。ルココの結婚相手は俺くらいの容姿で、俺くらいルココのことを大事にし、ルココが好きなことに好きなだけ時間を費やせる環境を提供できる相手じゃないとダメに決まっている。俺はルココに見合う男を探すために社内の若手や知り合いを調査していた。そんな中、ルココから大好きな人ができたとの報告があった。
二次元しか興味がなかったルココが現実世界に目を向けたのはよほど父の候補が気に入らなかったのだろう。きっと急いで探したのでろくでもない男を選んだのだろうと思ったが、まさかの美男子。物静かで、華奢だが、ルココが好きそうな容姿だ。だがここで安心してはならない。可愛いルココを騙して金を搾取しようとしている可能性もあるし、大人しいやつに限ってモラハラや暴力を振るったりもする。
慎重に見定めるために初対面で嫌な男を演じた。それでもやつは嫌な顔一つせず、諦めることすらしなかった。その後、何度も彼にあったが、俺がどんなに意地悪しても、張り合っても、揺さぶっても、彼はいつも穏やかに俺たちを見守っていた。ルココを連れて行くデート先も庶民的な場所ばかりだし、ルココへのプレゼントもカッコつけて無理をせずに身の丈にあったものを与えている。そしてそれに満足するルココ。彼らに溢れる富は必要ないのかもしれない。彼の辛抱強さと寛大さに俺の気持ちも変わりつつあったそんな矢先にルココから助けてくれとの電話があった。
その日俺は仕事で遠くにいた。どんなに急いでも一時間はかかる。丸留にも電話が繋がらない。実家の執事にも連絡をして助けに行けるものたちを行かせてはいたが、俺よりも、彼らよりも先にルココを助けたのは白井世奈だった。