男装して婚約者を演じていたらお兄様に目をつけられてしまいました
ルココから世奈の家にいると聞いて世奈の家に向かった。世奈は思ったよりもいい暮らしをしていたし、ルココが世奈のことを思っていることは十分に理解できた。だが、ここで一つ問題が生じた。お礼を言って顔をあげた瞬間に飛び込んできた世奈の笑顔。
可愛い……わけないじゃないか。男だぞ。男。
その日からふとした瞬間に世奈のあの微笑みが頭に浮かぶ。
いや、ないない。この俺が。あるわけないだろう。
俺の恋愛対象は女だ。疲れてるんだ。きっと俺は癒しを求めてるんだ。そう思って高級クラブに行ったがどんなに着飾った女性を見ても何も感じない。むしろこんなことをしたせいで逆に世奈のことを考える時間が増えてしまった。ありえない。会わない間に美化してしまうあれに違いない。
ということで、俺はお礼もかねて世奈を食事に誘うことにした。ルココが課題で忙しいと嘆いている日に世奈の家を訪ねると彼は家にいた。呼び出して予約していたレストランに向かう。いつもはルココがいてじっくり見ることはなかったが、こうして見ると本当に華奢な男だ。あまりジロジロ見るのはよくないので車の中ではあまり見ないようにしていた。正直ルココがいなければ話すことなんてない。そもそも寡黙な男。向こうから話題を振ってくることはまずないだろう。
レストランでは聞こえるか聞こえないかの小さな声で指でさしながら注文するし、料理が届くまでは目も合わさず静かに待っているし、料理が運ばれてきたかと思えば幸せそうに食うし、初めて目にしただろう料理は恐る恐る一口食べ、じっくり味わったかと思えば笑顔でがっつくし、本当になんだこの生き物は。
見ているだけで楽しい。待て待て俺。やばい。俺何か変な沼に堕ちてないか? 相手は男だし、妹の恋人だぞ。俺はなにをしにここにきたんだ。冷静になれ。普通に接すればいいだけだ。
「美味いか?」
世奈はリスのように口いっぱいに頬張って「はい」と返事をした。
可愛い。いや、可愛いってなんだ俺。
世奈は口元に手を持っていき申し訳なさそうに首を上下に振った。
なんでそんなに可愛い行動するんだ。
「気にするな。食え」
落ち着くために何か会話しなければ。何か、何か。そうだ。俺はルココを助けてくれたお礼をしに今日来たんだ。お礼を言わなければ。
「ルココから君の話をよく聞いてる。人見知りで寡黙だが、兄弟想いでとても優しい人だといつも褒めてる。別に将来を約束するわけじゃないが、俺は君たちに少し時間を与えてもいいと思っている」
俺の気が振れる前にしっかり話をつけなければ。
可愛い……わけないじゃないか。男だぞ。男。
その日からふとした瞬間に世奈のあの微笑みが頭に浮かぶ。
いや、ないない。この俺が。あるわけないだろう。
俺の恋愛対象は女だ。疲れてるんだ。きっと俺は癒しを求めてるんだ。そう思って高級クラブに行ったがどんなに着飾った女性を見ても何も感じない。むしろこんなことをしたせいで逆に世奈のことを考える時間が増えてしまった。ありえない。会わない間に美化してしまうあれに違いない。
ということで、俺はお礼もかねて世奈を食事に誘うことにした。ルココが課題で忙しいと嘆いている日に世奈の家を訪ねると彼は家にいた。呼び出して予約していたレストランに向かう。いつもはルココがいてじっくり見ることはなかったが、こうして見ると本当に華奢な男だ。あまりジロジロ見るのはよくないので車の中ではあまり見ないようにしていた。正直ルココがいなければ話すことなんてない。そもそも寡黙な男。向こうから話題を振ってくることはまずないだろう。
レストランでは聞こえるか聞こえないかの小さな声で指でさしながら注文するし、料理が届くまでは目も合わさず静かに待っているし、料理が運ばれてきたかと思えば幸せそうに食うし、初めて目にしただろう料理は恐る恐る一口食べ、じっくり味わったかと思えば笑顔でがっつくし、本当になんだこの生き物は。
見ているだけで楽しい。待て待て俺。やばい。俺何か変な沼に堕ちてないか? 相手は男だし、妹の恋人だぞ。俺はなにをしにここにきたんだ。冷静になれ。普通に接すればいいだけだ。
「美味いか?」
世奈はリスのように口いっぱいに頬張って「はい」と返事をした。
可愛い。いや、可愛いってなんだ俺。
世奈は口元に手を持っていき申し訳なさそうに首を上下に振った。
なんでそんなに可愛い行動するんだ。
「気にするな。食え」
落ち着くために何か会話しなければ。何か、何か。そうだ。俺はルココを助けてくれたお礼をしに今日来たんだ。お礼を言わなければ。
「ルココから君の話をよく聞いてる。人見知りで寡黙だが、兄弟想いでとても優しい人だといつも褒めてる。別に将来を約束するわけじゃないが、俺は君たちに少し時間を与えてもいいと思っている」
俺の気が振れる前にしっかり話をつけなければ。