男装して婚約者を演じていたらお兄様に目をつけられてしまいました
正体がバレてしまったようです
笑いながらなに言っってるんですかと誤魔かせば勘違いだったで済ませてくれるだろうか。でも、身ぐるみを剥がされたら言い逃れようもない。ここでの最適解は狼狽えず、相手の目を見て黙秘だろう。深呼吸して頼人さんの瞳を見る。お願い。どうかその疑念を水に流してくれ。
「そうか。女だったのか。よし、分かった俺が協力してやる」
「え?」
曖昧に終わらせてくれたらそれで十分だったのに、なぜ? 女と分かった上で協力すると言ってくるのか。これは罠か?
「心配するな。俺に任せろ」
頼人さんは満足そうに微笑んだ。
数日後、ルココちゃんがうちにやってきた。何事もなかったかのようにフルーツてんこ盛りのタルトケーキと紅茶を楽しんでいる。丸留さんはいつものようにルココちゃんのそばに控えている。丸留さんがルココちゃんのそばにいなかったのはあの一日だけだ。あの日がなければ女だと疑われることはなかったのかもしれない。だが、のこのこ頼人さんについて行って好きを見せたのは私だ。
ルココちゃんにはあの後すぐに電話で謝ったが改めてちゃんと面と向かって謝らなければ。
「この度は私の失態で……」
「あら、兄はわたくしたちの味方になると約束しましてよ。大成功ではございませんか」
そう。それがまた不思議なのだ。私が女だとバレたのなら私たちが彼らを騙していることに気づいたということだ。
「わたくしも兄の想像力には驚きましてよ。まさかわたくしたちの恋愛対象を女性だと勘違いするなんて」
「え?」
ルココちゃんは丸留さんが注いだ紅茶を一口飲んで一息つくと話を続ける。
「ということで、これからはご本人として振舞っていただいて結構です」
「私のまま?」
「ええ。兄にはわたくしたちの関係以外、全て真実を伝えております」
話を聞けば、ルココちゃんは契約を結んだ後に私のことを調べていたらしい。まあ、よく考えれば得体の知らぬ者を雇うのはリスクが高すぎる。私がアルバイトを辞めるまでの期間は、ルココちゃんたちにとっての調査期間だったようだ。家庭環境、経歴、アルバイト状況を知り、大変な時でも悪事に手を染めずにいた私を信用してくれたようだ。そして、頼人さんの誤解をうまく利用して私の家庭事情を正直に話したらしい。
「わたくしが卒業するまでどうぞよろしくお願いいたしますね」
ルココちゃんは満面の笑みを見せた。
大丈夫なのだろうか……。
「そうか。女だったのか。よし、分かった俺が協力してやる」
「え?」
曖昧に終わらせてくれたらそれで十分だったのに、なぜ? 女と分かった上で協力すると言ってくるのか。これは罠か?
「心配するな。俺に任せろ」
頼人さんは満足そうに微笑んだ。
数日後、ルココちゃんがうちにやってきた。何事もなかったかのようにフルーツてんこ盛りのタルトケーキと紅茶を楽しんでいる。丸留さんはいつものようにルココちゃんのそばに控えている。丸留さんがルココちゃんのそばにいなかったのはあの一日だけだ。あの日がなければ女だと疑われることはなかったのかもしれない。だが、のこのこ頼人さんについて行って好きを見せたのは私だ。
ルココちゃんにはあの後すぐに電話で謝ったが改めてちゃんと面と向かって謝らなければ。
「この度は私の失態で……」
「あら、兄はわたくしたちの味方になると約束しましてよ。大成功ではございませんか」
そう。それがまた不思議なのだ。私が女だとバレたのなら私たちが彼らを騙していることに気づいたということだ。
「わたくしも兄の想像力には驚きましてよ。まさかわたくしたちの恋愛対象を女性だと勘違いするなんて」
「え?」
ルココちゃんは丸留さんが注いだ紅茶を一口飲んで一息つくと話を続ける。
「ということで、これからはご本人として振舞っていただいて結構です」
「私のまま?」
「ええ。兄にはわたくしたちの関係以外、全て真実を伝えております」
話を聞けば、ルココちゃんは契約を結んだ後に私のことを調べていたらしい。まあ、よく考えれば得体の知らぬ者を雇うのはリスクが高すぎる。私がアルバイトを辞めるまでの期間は、ルココちゃんたちにとっての調査期間だったようだ。家庭環境、経歴、アルバイト状況を知り、大変な時でも悪事に手を染めずにいた私を信用してくれたようだ。そして、頼人さんの誤解をうまく利用して私の家庭事情を正直に話したらしい。
「わたくしが卒業するまでどうぞよろしくお願いいたしますね」
ルココちゃんは満面の笑みを見せた。
大丈夫なのだろうか……。