男装して婚約者を演じていたらお兄様に目をつけられてしまいました
頼人さんが連れてきてくれたのは夜景の美しいフレンチレストラン。おしゃれをした男女が楽しそうに食事をしている。景色の良い席に案内されて食事を楽しんでいると周りから視線を感じた。周りを見ると女性は目尻を下げて、頼人さんに視線を向けているではないか。同伴している男性は気付きながらも必死に興味を持ってもらおうとアピールしているようにも見える。それにしてもここは男女二人組みばかりだ。いわゆるデートスポットってやつだろうか。冷静に考えてみるとこれだけ注目を集めてしまう男とこんなに呑気に食事していて大丈夫だろうか。
「頼人さんはご結婚されていますか?」
メインのステーキを上品に切り分けていた頼人さんは動揺したのかカチャンと食器にナイフをぶつけた。もしかしたら禁断の質問だったのか? 極度のブラコンで夫婦仲が悪くなったとか、そもそも彼女ができないとか。
「俺には妻も彼女もいない」
安心しつつも、投げやるような言い方が気になった。恋愛で何か嫌な思い出でもあるのだろうか。
その日から頼人さんは毎日のようにうちにきた。資格試験の勉強や与えられた課題の成果を確認しながら、私の疑問や悩みを聞いて解決策の提示が終わると夕食に連れ出す。不思議なことにルココちゃんが来る日は頼人さんは来ない。あれだけ妹思いの頼人さんならルココちゃんが来る日こそ現れてもおかしくないのだが、気が変わったのだろううか。
「エスカルゴ食ってみるか?」
にっこり微笑み取り出したエスカルゴを差し出してきた。
「ありがとうござっ」
「口を開けろ」
小皿を差し出したが、乗せてくれる気配はない。
「ほら、どうした」
「その、行儀が……」
「ここは行儀を重んじる店じゃない」
確かにここは高級レストランでも気取ったお店でもなく、庶民的なフレンチレストランだ。いつも高級な店では少し疲れるとぼやいたからか、今日は作法を気にせずに楽しめるような店を探してくれたようだ。周りは私たちのように家族や友人と食事をシェアしている。
それにしても口を開けて食べるなんて……。
「さっさと口を開けろ。腕が疲れる」
持たせてくれたら疲れないのにと思いながら口を広げると口の中にオリーブとハーブのハーモニーが広がる。
美味しい!
緩んだ表情を見せると頼人さんが笑っていた。
やってしまった。表情を戻さねば。
「もう一個食うか?」
あっという間に2個目を取り出していた頼人さんに釣られて口を開ける。
「餌付けしてるみたいだな」と頼人さんは無邪気に笑った。男のフリをしてルココちゃんの恋人を偽っている時はあんなにも敵対心を露わにしてきたのに、女とわかってこの態度。もしかして頼人さんって女好きのダメ男だったりする?
「頼人さんはご結婚されていますか?」
メインのステーキを上品に切り分けていた頼人さんは動揺したのかカチャンと食器にナイフをぶつけた。もしかしたら禁断の質問だったのか? 極度のブラコンで夫婦仲が悪くなったとか、そもそも彼女ができないとか。
「俺には妻も彼女もいない」
安心しつつも、投げやるような言い方が気になった。恋愛で何か嫌な思い出でもあるのだろうか。
その日から頼人さんは毎日のようにうちにきた。資格試験の勉強や与えられた課題の成果を確認しながら、私の疑問や悩みを聞いて解決策の提示が終わると夕食に連れ出す。不思議なことにルココちゃんが来る日は頼人さんは来ない。あれだけ妹思いの頼人さんならルココちゃんが来る日こそ現れてもおかしくないのだが、気が変わったのだろううか。
「エスカルゴ食ってみるか?」
にっこり微笑み取り出したエスカルゴを差し出してきた。
「ありがとうござっ」
「口を開けろ」
小皿を差し出したが、乗せてくれる気配はない。
「ほら、どうした」
「その、行儀が……」
「ここは行儀を重んじる店じゃない」
確かにここは高級レストランでも気取ったお店でもなく、庶民的なフレンチレストランだ。いつも高級な店では少し疲れるとぼやいたからか、今日は作法を気にせずに楽しめるような店を探してくれたようだ。周りは私たちのように家族や友人と食事をシェアしている。
それにしても口を開けて食べるなんて……。
「さっさと口を開けろ。腕が疲れる」
持たせてくれたら疲れないのにと思いながら口を広げると口の中にオリーブとハーブのハーモニーが広がる。
美味しい!
緩んだ表情を見せると頼人さんが笑っていた。
やってしまった。表情を戻さねば。
「もう一個食うか?」
あっという間に2個目を取り出していた頼人さんに釣られて口を開ける。
「餌付けしてるみたいだな」と頼人さんは無邪気に笑った。男のフリをしてルココちゃんの恋人を偽っている時はあんなにも敵対心を露わにしてきたのに、女とわかってこの態度。もしかして頼人さんって女好きのダメ男だったりする?