男装して婚約者を演じていたらお兄様に目をつけられてしまいました
「なんなんだよ。生徒は女性ってあれだけ言っただろう」
「最初の申込では女性お一人だったのですが……」
「なんで男連れてくるんだよ。しかも何あのイケメンたち。生徒の視線は僕に釘つけって相場は決まっているのに今日は半分以上も奴らに奪われたじゃん。ありえないんだけど」
「募集は女性のみと表記されますか?」
「そんなことしたら僕の印象悪くなるじゃん。男性デー作れとか言われるじゃん。輩に囲まれて教えるとか地獄だからね」

 男性生徒が申込そうになるとスタッフは言葉巧みに他の教室を案内するようになっている。特典つけたり割引つけたり魅力的な女性講師を紹介したり、まあやり方には色々ある。この一年、通常よりも高い授業料を払ってでも僕に習いたいという女性だけで成り立ってきたというのに、初めてきた男性生徒は、キモいわけでもおっさんなわけでも僕に憧れる男の子なわけでもなく、ガチイケメン三人衆。

「しかもあの白髪の人なんなの?」

 僕より盛り付け上手だし、味見させてもらったが、味付けも僕より上。
 
「僕から学ぶ必要なくない?」
「あちらにいたメイドのような服をきた女性のお連れさんらしくて」

 机の上に置かれた生徒名簿を手に取る。今まで見たこともなかった名簿。全員女性だし、名前なんて気に入った子とお金を落としてくれそうな人だけ覚えればいいだけだった。顔写真と名前と性別が載ったリスト。可愛かった子は、芹沢ルココ。名前も可愛い。一番イケメンだったのが芹沢頼人。夫婦か兄妹か。ペアを作った時に分かれていたのでおそらく兄妹。そして目立たない女顔の大人しい子は白井世奈……

「は? 女?」

 思わず立ち上がった。男とばかり思っていた。背は高いし、髪は短いし、化粧すらしてなかったし、服装だってまんま男だったじゃん。いや。でも顔は女顔だった。あれは、女顔じゃなくて女だったのか。

「なんだ。なんだ」

 男は二人だけじゃん。しかもあの子一人浮いてたよね。ニンマリ顔が止まらない。

「来週が楽しみだ」

 僕はスキップしながら控え室を出た。


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