男装して婚約者を演じていたらお兄様に目をつけられてしまいました
二週間ほど過ごし、とうとうその日がやってきた。
ルココちゃんから届いた待ち合わせ場所は、ルココちゃんが好きそうな宮殿のような佇まいのレストラン。
一歩中に入るとその豪華さに目を奪われる。
スーツの裾をビシッと伸ばし、ネクタイが曲っていないことを確認する。さらしベストによって胸はなくなり違和感がまるでない。艶めく革靴も完璧だ。
あとは女性とバレないようにするだけだ。
受付のようなところで予約している旨を伝えるとスタッフの人が個室に案内してくれた。
予約時間より少し早めに着いたのでまだ誰もいない。
席に着き、スタッフがいなくなったのを確認してして喉の調整をするために咳払いする。
大きく息を吸って吐いて緊張を和らげようとしたその時だった。
扉が開き、スタッフが人を通す。
私は席を立ち、軽く頭を下げる。
スタッフの後ろから入ってきたのは背が高く、顔立ちの整った男性。その後ろからお上品に入ってきたのはいつものようにロココ調のドレスを着たルココちゃん。
正真正銘彼らは美男美女の兄妹だ。
スタッフが部屋を出るとお兄さんが低音の声で話し始めた。
「芹沢頼人だ」
「あ、えっ……」
緊張のあまり言葉に詰まる。
「言っておくが、自分の身の丈もわからないような男にルココを預ける気はない」
そりゃそうだよな。わけわからない男がいきなり現れて婚約したいなんて言ったら怒って当然だ。
「お兄様」
「ルココがどうしてもというから来ただけだ。俺はルココと食事するために来た。気に食わないなら君は帰ってくれて結構だ」
私とは目を合わせることはなく、頼人さんは席につく。
さて、どうしたものか。
ここで帰れば全てが終わる。かといって自分がいかにルココちゃんに相応しかを解いたとて、聞く耳持たない人には騒音でしかない。
ロゼフなら……。
私は何も言わず、表情を柔らかくし、彼らの邪魔にならないように気配を消した。料理が運ばれて食事が始まると、静かに食す。二人の会話の邪魔にならないように音を立てず、表情も変化させず、ただ目の前の料理を胃の中に詰めていく。美味しくて笑みが溢れそうでも我慢だ。表情の変化一つで気に触るかもしれない。
デザートを食べ終わると頼人さんは立ち上がる。
「ああ、君。まだいたんだ。ルココにまとわりつくだけでいい飯食えて嬉しだろう」
「お兄様」
「ルココも親に決められた結婚が嫌だからとこんな得体の知れないやつを連れてくるな。俺がちゃんと探してやるから」
ルココちゃんはお兄さんが自分に甘いとは言っていたが、しっかり甘やかす部分とそうでない分は分けているようだ。なんだか安心した。この人がいてくれたら、私が失敗してもルココちゃんが変な男に騙されることはないだろう。
家に着くと一気に疲れが襲いかかってきた。
お風呂に入るため服を脱ぎ、サラシを巻いた胸に手を当てすっとお腹まで撫で下ろす。女だとバレなかったみたいだが、これからどうなるのだろうか。どれだけルココちゃんの力になれるのだろうか。
ルココちゃんから届いた待ち合わせ場所は、ルココちゃんが好きそうな宮殿のような佇まいのレストラン。
一歩中に入るとその豪華さに目を奪われる。
スーツの裾をビシッと伸ばし、ネクタイが曲っていないことを確認する。さらしベストによって胸はなくなり違和感がまるでない。艶めく革靴も完璧だ。
あとは女性とバレないようにするだけだ。
受付のようなところで予約している旨を伝えるとスタッフの人が個室に案内してくれた。
予約時間より少し早めに着いたのでまだ誰もいない。
席に着き、スタッフがいなくなったのを確認してして喉の調整をするために咳払いする。
大きく息を吸って吐いて緊張を和らげようとしたその時だった。
扉が開き、スタッフが人を通す。
私は席を立ち、軽く頭を下げる。
スタッフの後ろから入ってきたのは背が高く、顔立ちの整った男性。その後ろからお上品に入ってきたのはいつものようにロココ調のドレスを着たルココちゃん。
正真正銘彼らは美男美女の兄妹だ。
スタッフが部屋を出るとお兄さんが低音の声で話し始めた。
「芹沢頼人だ」
「あ、えっ……」
緊張のあまり言葉に詰まる。
「言っておくが、自分の身の丈もわからないような男にルココを預ける気はない」
そりゃそうだよな。わけわからない男がいきなり現れて婚約したいなんて言ったら怒って当然だ。
「お兄様」
「ルココがどうしてもというから来ただけだ。俺はルココと食事するために来た。気に食わないなら君は帰ってくれて結構だ」
私とは目を合わせることはなく、頼人さんは席につく。
さて、どうしたものか。
ここで帰れば全てが終わる。かといって自分がいかにルココちゃんに相応しかを解いたとて、聞く耳持たない人には騒音でしかない。
ロゼフなら……。
私は何も言わず、表情を柔らかくし、彼らの邪魔にならないように気配を消した。料理が運ばれて食事が始まると、静かに食す。二人の会話の邪魔にならないように音を立てず、表情も変化させず、ただ目の前の料理を胃の中に詰めていく。美味しくて笑みが溢れそうでも我慢だ。表情の変化一つで気に触るかもしれない。
デザートを食べ終わると頼人さんは立ち上がる。
「ああ、君。まだいたんだ。ルココにまとわりつくだけでいい飯食えて嬉しだろう」
「お兄様」
「ルココも親に決められた結婚が嫌だからとこんな得体の知れないやつを連れてくるな。俺がちゃんと探してやるから」
ルココちゃんはお兄さんが自分に甘いとは言っていたが、しっかり甘やかす部分とそうでない分は分けているようだ。なんだか安心した。この人がいてくれたら、私が失敗してもルココちゃんが変な男に騙されることはないだろう。
家に着くと一気に疲れが襲いかかってきた。
お風呂に入るため服を脱ぎ、サラシを巻いた胸に手を当てすっとお腹まで撫で下ろす。女だとバレなかったみたいだが、これからどうなるのだろうか。どれだけルココちゃんの力になれるのだろうか。