ファースト・ラブ

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後ろから、パタパタと足音がして

「水野、」
腕を掴まれる。

振り返ると、俊先輩で。

「試合、見に行けへんくてごめん。だって全部被ってんだもん。見たかった。水野のボール投げるとこ。」

胸がキュンってなる。

私だって…。俊先輩がバスケするところを見たかった。

でも私は、

「私は、見てました。」
「ん?」
「俊先輩のこと、見てました。試合は見に行けなかったけど…。」
俊先輩が、目をおっきくする。

あれ、何で泣きそうになってんの私。

「私は、俊先輩と話したかった…。」
涙が零れる。
いつも、俊先輩の周りには人がいて、話しかけたくても、話しかけられなかった。
もうなんで、涙止まってよ。

「ちょっとこっち、来て。」
手…。俊先輩に手を引かれて、木の影に移動する。
足元には黄色いイチョウの葉が、積もっていた。
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