ファースト・ラブ

「ひまちゃん。」

それから、俊くんは私のことを名前で呼ぶようになった。

放課後は、俊くんは教室で須藤先輩と勉強をして、私の部活が終わると一緒に帰る。それが私たちの日課になった。

学校からの帰り道。俊くんが店の前でふと立ち止まる。それは通学路にある小さなケーキ屋さん。

「やっぱさ、女の子は甘いものが好きなの?」
「えっ?うんまあ好きっちゃ好きかな」
「じゃあ食べて帰る?」
「え!食べる!」

「初デートしよか」
俊くんが目を細めて笑って、私の頭を撫でる。
その目には、受験生だから、あんま遊べなくてごめんな、って気持ちが混じってた。

別に、全然気にしなくていいのに。私は、毎日一緒に帰ってるだけで幸せだよ。

「デート」の文字はあまりにも魅力的で、くすぐったくて、心が躍った。
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