ファースト・ラブ

ーーーーーー俊sideーーーーーーー

鞄からプリントを取り出す。
それは、うちの学校の去年の進学実績だった。

ひまちゃんがプリントをじっと見ている。

「ひまちゃんは、どっか行きたいとことかもう決まってる?」
「うん。」
「どこ?」
「慶応」
「慶応…」
「俊くんは?」
「内緒。」
「え〜」

正直言うと、大学なんて、入れるとこならどこでもいいや、と思ってた。ただ、勉強科目が少なくて済むからという理由で私立志望だった。

この頃の俺は、特にこれといった目標もなく、なんとなく周りの雰囲気に飲まれて勉強してただけだ。

「なんで慶応なの?」
「なんか、かっこいいから」

「かっこいい…」

.

次の日学校で、模試の結果を踏まえて進路希望調査がとられた。
高3の1学期、2学期、3学期、とそれぞれに第一志望から第三志望まで書く欄がある。

1学期に書いたときから、希望に変更があるかどうかを書いて提出しなければいけない。
俺は第一志望の欄を書きなおして提出した。

.

放課後、担任の吉沢に呼び出された。呼び出されたのは2人。須藤と、俺。

2人で数学研究室に行く。吉沢が数学の教科担任で、放課後はいつもそこにいるから。

ドアをノックすると、「はーい」と中から声が聞こえたので、部屋に入る。「失礼しまーす。」
< 40 / 61 >

この作品をシェア

pagetop