ファースト・ラブ
俊くんと須藤先輩の教室。ドアを開ける。
だけど、誰もいない。
あれ、ここにいると思ったのに。

ガランとした誰もいない空間を見つめて立ち尽くしてると、

「部長、サボりですか」
後ろから声がして振り向くと、吉沢先生だった。

「あっ…。」
こういう時に咄嗟に都合の良い言い訳が思いつかないのが私だ。
これがミカとかなら多分上手いように言いくるめてこの場をしのぐんだろう。
「俊先輩なら、数研にいますよ。」吉沢先生が、わざとらしく俊先輩、って呼ぶ。「あいつ、最後の最後まで、数学だけ出来なくて、最近俺の隣でずっと勉強してる。」

吉沢先生が笑う。
「好きな子に『かっこいい』って言われたんだって。」吉沢先生がわざと白々しく言う。


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