ファースト・ラブ
そういえば、そんなこと言ったっけ。

「あいつ、目の色が変わったんだよ。俺、あいつが志望校上げてきた時、ぶっちゃけ最初は無理だろな~って思ってたけど、今は、もしかしたらいけるかもしれないって思ってる。あいつが今、どんな目をして勉強をしているか、見ておいた方がいい。

ばかだけど、ばか正直で、単純で、真っ直ぐで、諦めの悪いあの姿勢は、全受験生が見習うべきだと思う。」

「水野、今何の授業中?」
「世界史です…」
「佐藤先生か…」
思案した顔をして、吉沢先生がいじわるそうに笑う。

げっ、正直に言うんじゃなかった。

「うそうそ。言わないよ。俊に、わからないことあったら俺職員室で飯食ってるからって言っといて〜」

吉沢先生は、手をひらってさせて行ってしまった。


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ガラガラ、って数研のドアを開ける。
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