ファースト・ラブ
公立高校の年季の入った立て付けの悪いドアは、大きな音を立てて開いた。

そこには、俊くんの横顔があって。俊くんは、ドアが開いたことにも気が付かず、シャーペンを走らせていた。

“あいつが今、どんな目をして勉強しているか、見ておいた方がいい。”

その”目”は、今までの俊くんのどんな瞬間にも、見たことのないほどに真剣な目をしていた。
胸が熱くなって、視界がぼやけて、涙が雫となって頬を伝う。私は泣いていた。

一心不乱に努力する人のその目は、人を感動させた。

俊くんが、顔をあげて、ふう、と息をつく。
その時に、こちらを見て私に気づいた。
私は慌てて涙を拭く。

「ひまちゃん…?なんで…?」
「サボってきた」
「は?」
「吉沢先生がね、俊くんがここにいるって教えてくれた。」
「あいつが?」
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