ファースト・ラブ

「ちょっと俊あんたボタンは!?」
綾先輩が俊くんの学ランをめくる。

「あるあるある。一個とっといた。」
ポケットから取り出され、俊くんの手のひらに乗ったボタン。「ひまにあげようと思って…。」
俊くんが首筋をポリポリ掻きながら、ん、って私に差し出す。

周りの生徒たちがわぁ、って声をあげる。

「ん、じゃなくて、もっとなんかあるでしょ言うことが!」
綾先輩が足をバタバタさせる。

「うるさいな!それをここでやれって言うのかお前は!?」

それを見てユイがフフ、って笑う。場に少し涼しい風が吹いた(様な気がした)。

そんなやりとりを見て、また私は涙ぐんでしまう。

先輩たち、卒業しないで。

綾先輩が「私たちもかわいい後輩を持ったねえ」って頭を撫でてくれる。


< 58 / 61 >

この作品をシェア

pagetop