三人が離れてくれませんっ

わたしは昨日のお引っ越しの件をいっちゃんに話した。



話した時、いっちゃんは『そっか』って笑ってたけど──





「お、樹だぁ」

「はよ」



「うん、おはよう二人とも。一体なにしてんの?教室の引っ越しって聞いたことないんだけど俺。一日の間にどうしてこうなったのか意図を簡潔に話してくれる?」




い、いっちゃん……早口すぎる。



わたしと教室前に立って、二人を待っていたいっちゃんは開口早々にひきつった笑みを見せた。


一瞬だけ、ポカンとしたしゅーちゃんとたーちゃんだったけど、普通にわたしたちの間を割って教室の中に入っていく。

席についた二人のもとに行き、何故かわたしの席に座ったいっちゃんは再度尋ねる。



「説明」



今しがた放った早口を全て纏めた一言で。




「……匠が先に居たから、俺も来ただけだ」


「行き来ダルくて、もう紫乃と同じ教室にしちゃおっみたいな」


「……ふうん」



全っ然、納得してない返事だ。

それはこの二人も察してると思うけど……たーちゃんなんか机に伏せちゃったし。



「つか、樹が最初に言ったんだろ。困ったら俺らに言えって。だったら困る前に紫乃のそばにいた方がいいんじゃねーの……って思うんだよ」


「……確かに言ったし、一理あるけどね」


しゅーちゃんの言葉にちょっとは納得しつつあるのか、いっちゃんは目を伏せてしまう。


「紫乃が来てもうすぐ一ヶ月が経つ。慣れた時の油断が一番危ねぇからな」


「うん……そうだね」




いっちゃんは小さく何度も頷き、少しの沈黙が訪れ、わたしたちは黙ったまま待っていた。

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