神様、どうか目をつぶってください!

「そんな顔をしても駄目です。穴を塞いで、ゴブリンが人間界に来られないようにしてください」
「えー」
「お互いの平和を保つために、魔界と人間界を分けると決めて、実際に分けたのは魔王様なんですよね?」
「そうだけど……」

 今から100年ほど前のことだと伝えられている。
 人間のほうはイタズラを繰り返す魔族たちに困っていたし、魔族のほうは魔族のほうで、魔族の子どもをお菓子でつって重労働させる人間に不満を抱いていた。
 そこで両者は話し合いをおこない、世界を真っ二つに分断することを決めた──
 誰もが知る歴史だ。

「僕、ここんとこ体調不良が続いてるんだよね。だから結界に穴が空いたんだな。魔法使うのには関係ないけど、ギックリ腰にもなっちゃってるし。この通り、満身創痍なわけ。わかってもらえるかな?」
「……ということは体調さえよくなれば?」
「まあ、簡単に塞げると思うけどさー」

 それなら私の得意分野だ。
 聖女……というか、つい先ほどまで聖女見習いだったけれど、医療分野ならお任せあれ。

「触診させてもらいますね」

 『えっ? えっ?』と戸惑う魔王様の背中から腰に、ペタペタと手を当てた。
< 11 / 31 >

この作品をシェア

pagetop