神様、どうか目をつぶってください!
3. ゴブリン・テイマー
 この部屋に担ぎ込まれてから、ずっと気になっていた。

「掃除、していますか?」

 四方には埃が堆積しているし、空気も澱んでいて、呼吸するだけで肺が汚染されそうだ。

「してない」
「どのくらいですか?」
「魔界と人間界を分断してからだから、ざっと100年くらいかな」
「ひいぃ、不潔!」

 思わず身震いした。

「それでは心身ともに病気になって当然ですよー!」
「以前は人間も雇用してたから、彼らが掃除してくれてたんだけど……」

 私は自分の胸をパンッ! と叩いた。

「お任せください」

 場を清めるための掃除は、それこそ聖女見習いとして必須の技術だ。
 ただ……

「……私ひとりでお城中を掃除するには何ヶ月かかるかわかりませんけど」

 何部屋あるのだろう……
 最後の部屋を掃除し終えた頃には、最初の部屋にまた埃が積もり始めていそう……
 途方もなくて目眩がする。

「なら、ゴブリンたちに手伝わせてやってよ」

 私をここに連れてきたゴブリンたちが『ギィギィ』と手を叩いた。
 飛び跳ねている者もいる。

「いいんですか?」
「僕がこの通りで構ってやれないから、退屈して人間界で悪さしてるんだ。掃除の仕方を教えてやってくれない?」
「やってみます! 言葉が一方通行なのが若干心配ではありますが……」
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