神様、どうか目をつぶってください!



 魔王様がよく使用する部屋から順番に掃除していくことにした。
 まずは魔王様がいた、この部屋から。

「それでは始めます。ゴブリンのみなさん、準備はいいですか?」

 魔王城にある掃除道具は1世紀を経て、使い物にならなくなっていた。
 ゴブリンたちが今手に持っているのは、雑巾サイズに切っただけの古布や、棒に古布を巻き付けただけの即席お掃除グッズだ。

「オッケー」
「高いところからやればいいんでしょ?」

 気合は十分だし、私の説明もきちんと聞いて理解してくれている。
 なんだ、いい子たちじゃないの。

 ちなみに魔王様は、ゴブリンに頼んでカウチごと庭園に運び出してもらった。
 新鮮な空気の中で、お昼寝してもらうことにしたのだ。

「ゆっくり、平行に持ち上げて……1、2、1,2……」
「やあ、ジョゼは立派なゴブリン・テイマーだな」

 魔王様はおかしそうに笑ったが、あのとき私は傷ついた。
 聖女らしくなりたかったのが、まさかの魔物使いだなんて……
 い、いいえ! ゴブリンと一緒に魔王城を掃除できたのなら、立派な聖女になれるはずだわ。
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