神様、どうか目をつぶってください!
つぶらな瞳で懇願されて断れるはずがない。
「何を作る予定なの?」
「いつも適当に煮るか焼くかしてる。今日のメイン食材は一角兎で、ほかに野菜もいろいろあるよ」
「材料を見せてくれる?」
「これだよ」
兎肉は氷漬けにされていて、野菜は無造作に木箱に放り込まれている。
一角兎はともかくとして、野菜のほうは若干大きかったり色が濃かったりという違いはあるものの、見慣れたものが多い。
ほんの100年前までは人間界と繋がっていたのだから、特段驚くようなことでもないだろう。
「魔王様のために消化にいいものにしたいわ。兎肉と野菜のスープ、それからマッシュポテトにしましょう。本当は、血行をよくする薬草もあれば完璧なんだけど……」
「血行をよくするかはわかんないけど、薬草ならいっぱいあるよ」
「そうなの? どこに?」
「今魔王様がいる庭園」
「それはぜひ案内してほしいわ!」
私は手ごろな籠を見つけて拾い上げ、ゴブリンたちのあとをついていった。