神様、どうか目をつぶってください!



 ゴブリンたちは、私と皿洗いをする部隊と部屋の掃除をする部隊との2班に分かれた。

「僕は何すればいい?」
「魔王様は拭き終わった食器をそっちの棚に片付けてください」
「了解。ジョゼは魔王・テイマーでもあるからね」
「ひいぃー! そんな称号は要りませーん」

 ちょうど片付けを終えた頃、掃除部隊が私を呼びにきた。

「この部屋だよ。ジョゼが気に入ってくれるといいな」
「えっ、こんな素敵な部屋を使わせてもらっていいの?」

 質素な暮らしをしてきた聖女見習いには、十分すぎる。
 今朝まで、平板を組み合わせただけの固いベッドと、小さなチェスト、それからもっと小さな本棚があるだけの部屋だったのだ。
 それが、ゴロゴロ転がれるだけの広さのある柔らかそうなベッドに、細かい装飾が彫られたアンティーク家具!

「とても気に入ったわ!」

 ゴブリンたちがうれしそうに引き上げていったところで、食事を採ってから回復し始めていた魔力を使い、浄化魔法を唱えた。

 神様、予想外に楽しく、充実した1日を過ごせました。
 今夜はぐっすり眠れそうです。

 日課にしている報告を済ませたとき、ドアをノックする音が聞こえてきた。

「ジョゼ、よかったら晩酌に付き合ってよ」
「それは、あまり感心しませんね」
「深酒はしないって約束するから」

 カチャッと音を立ててドアがほんの10数センチほど開き、その隙間からお酒のボトルが覗いた。
 それを見てしまったら、魔界のお酒はどんな味なのか、俄然興味が湧いてきてしまった。

「ちょっとだけですからね」
「さっすが、ジョゼ」
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