神様、どうか目をつぶってください!



 『星空が明るいのと、久しぶりに出た外が気持ちよかったから』と魔王様が言うので、庭園で飲むことにした。

「改めて魔界へようこそ」

 魔王様はグラスを傾けて、私のグラスに軽く当てた。

「ありがとうございます。では、いただきます」

 これは……何のフルーツだろう……
 果汁を発酵させているのは間違いないんだけど……

 ゆっくりとひと口ずつ、けれど何度も何度もグラスに口をつけた。

「ジョゼ、飲むねえ」

 魔王様がうれしそうに、おかわりを注いでくれる。

「飲んだことのない味だったので、つい。私、お酒にはうるさいですよ」

 神殿では、薬草を使った聖女ビールを醸造している。
 何を隠そう。その聖女ビールを改良し、巡礼の際に飲むことを全国民の憧れにした立役者はこの私だ。
 聖女ビールを改良したのが実は聖女見習いということで、今まで言えなかったけれど。

「なら、このお酒も薬草入れて改良することできる?」
「やってみましょうか。発酵期間を考えると、完成までに少なくとも3週間はかかりますけど」

 それだけあれば、魔王城も綺麗にできるだろうし、魔王様の体調だって……
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