神様、どうか目をつぶってください!

「そういえば今日半日だけでも、本当に元気になりましたね」
「うん、体が軽くなったよ。不調の主な原因は弱ったメンタルだったのかな」
「メンタル、弱ってたんですか?」
「この100年、もちろん魔族のみんながいてくれたんだけど、世界を閉ざしてしまったせいで閉塞感に潰されそうだったよ」

 なぜだか、魔王様の部屋に降り積もっていた埃が思い出された。

「そんな顔しないで」

 魔王様が手を伸ばして私の頬に触れた。

「ジョゼがやってきた瞬間、それまでかろうじて生きてただけだった心臓が、すごい速さで動き出したんだから」

 私の心臓はぎゅうっと絞られたみたいに苦しくなる。

「こんなふうにいつも1日の終わりに、ジョゼとゆっくり過ごせたら楽しいだろうな」

 どうやら魔王様に注がれるままに飲みすぎてしまったみたいだ。
 うれしいのか哀しいのか、自分の感情なのにさっぱりわからない。
 かろうじて泣きたい気分なことだけはわかった。

 けれど、泣きそうになったところで、思いっきり笑ってみせた。

「こんな私でよければ、これから3週間、毎日だって晩酌にお付き合いします」
「えっ、3週間? まあ、3週間あれば僕らも変わるかな……」
「色々なことが変わりますよ! もちろんいい方向に!」

 魔王様は私の言うことが信じられないのか、苦笑いしていた。

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