神様、どうか目をつぶってください!
陛下は、『直ちにゴブリンの侵入口となっている穴を塞ぐべき』だと判断された。
と、それはいい。
至極当然の流れだ。
王国中が納得している。
もちろん私だってそのひとり。
しがない聖女見習いとはいえ、常々世界規模での平和を願っているもの!
しかし、問題はここからなのだ。
この穴を塞いでくれるよう魔王に頼みにいくのが、なぜゆえ私なの?
なぜ? なぜ!?
どうしても解せなーい!
恨めしい気持ちで、再度神官長に視線をやった。
「ほら、魔王との交渉役として召喚されたのだから、胸を張って行きなさい」
「あれのどこが召喚ですか!」
「しっ! ジョセフィーヌよ、今さらどうにもできないのは理解できるだろう? とにかく行くだけ行ってきなさい。様子だけ確認したら、すぐに帰ってきてもいいから」
神官長の言う通りだ。
陛下と近衛兵に取り囲まれているこの状況では、逃亡することも到底できそうにない。
ため息を吐き、頭から穴に入っていく覚悟を決めた私は、ゆっくりと膝をついた。
のろのろしているのは、この期に及んでも往生際が悪いからでは決してない。
無理やり着せられたこの鎧と兜が重いからだ!
プルプル震えながら、どうにか頭を穴の高さに合わせたが、兜が重すぎて頭部ごと取れてしまいそう……
こんなときに思い浮かぶのは、あの召喚の儀だった。
今朝おこなわれた、魔王との交渉役を任せる勇者を異世界から呼ぶための──