神様、どうか目をつぶってください!

 ゴブリンが出入りしているこの穴は、魔界へと通じている。
 そして、この穴を塞ぐことができるのは、魔界の王のみである──

 下っ端の私はその場にはいなかったが、伝え聞いたところでは、神官長は陛下にそう説明したそうだ。
 さらに、『その交渉役として勇者を召喚するべき』だと提案したとも。

 召喚の儀をおこなうのは、空気が澄んでいる早朝でなければならないだとかで、私はまだ空が暗いうちから神殿の掃除を命じられた。
 にも拘らず、文句は思うだけに留めて、心をこめて磨き上げた。
 この国を救ってくださる勇者をお迎えするためだもの!

 掃除が終わると同時に、神官長が点検に現れた。

「うむ。ジョセフィーヌ、よくやったな。これならば、必ずや勇者様もやってきてくださるであろう」

 神官長から直接お褒めいただけるなんて!
 あのときの私は、無邪気に感激していた。

 だけど、なーにが『勇者様もやってきてくださるであろう』よ! ふーんだ。
 ……あっ! 神様、今の悪態はどうか聞かなかったことに……

 とにかく、そうこうするうちに陛下もお見えになって、いよいよ召喚の儀が始まった。
 隅っこで見学させてもらえることになった私は、ドキドキしながら、神官長が勇者様を召喚するのを待っていた。
 そして、ついにその瞬間はやってきた──
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