神様、どうか目をつぶってください!
流石の神官長も固唾を飲んだ。
これで私が戻ってこなかったら、召喚の儀で失敗したことを悔やんでくれるかしら?
でも、ご心配なく。
私なんて、本当は勇者でも聖女でもなく、ただの聖女見習いなんですもの。
魔界に一瞬だけお邪魔して、瞬きしている間に帰ってきますからね。ふふっ。
さあ、参りましょうか!
……ガッ!!
あら? もう一度……ぐうっ!
兜が大きすぎて穴に入らなかった。
近衛兵たちは堪えきれず失笑し始めた。
私は、首の骨がぽっきり折れてしまいそうなほど重い兜を脱ぎ捨ててやった。
ついでに鎧も。
考えてもみれば、こんな格好する必要なんてない。
戦いを挑みに行くわけではないんだから。
ガチャガチャという金属音が、笑い声をかき消してくれた。
身軽になって清々した気分だ。
空気がおいしい。
「それでは、ほんのちょっとだけ魔界に行ってまいります!」
私はこうして魔界へ入っていったのだった。