神様、どうか目をつぶってください!

 呼吸が整ってきたあたりで、ゆっくりと上体を起こした。

「きゃっ!」

 地面に座った体勢のまま、飛び上がった。
 だって、20体ほどのゴブリンが『ギィギィ』と声を立てながら、手を叩いていたから!
 穴を抜けるのに力を使い果たしていたせいで、拍手のする方向にまるで気づいていなかったが、なんと後方からではなく前方からしていたのだ。

 なるほど、ゴブリンたちは穴の通り抜けがスムーズにできそうなサイズだ。
 どれも7、8歳の子どもくらいの背丈で、おしりも小さい。

 このままバックして人間界へ戻りたいところだけれど、今すぐ襲ってきそうな雰囲気もないことだし、ひと言お願いするだけしておこう。
 立ち上がって、おへその前で手を組み、最大限感じよく映るようにお辞儀した。

「私、人間界から参りました聖女ジョセフィーヌと申します。突然訪問いたしましたのは、この穴を塞いでもらいたくて……って、ち、ちょっと、どこに連れていくつもりですか?」

 ゴブリンは『ギイッ! ギギィー!』と叫びながら、一斉に私を担いだ。

「いやっ、離してください!」

 身を捩って脱出しようとしたけれど、無駄な抵抗でしかなかった。
 身動きがとれない私は、禍々しくそびえ立つ建物へと簡単に運びこまれてしまったのだった。
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