神様、どうか目をつぶってください!



「痛っ……!」

 気だるそうにカウチに寝そべる男性の前に投げ出された私は、思わず目を見開いた。
 石の床に投げ出された痛さなど、あっさりと吹き飛んでしまった。

 ああ、神様!
 このような不浄な場所でお会いできるとは!

 ひと目見ただけで、心を搔っさらわれてしまった。
 世界が一変する。
 出会う前の私にはもう戻れないだろう。
 でも、それでいい。

 人外の美しさ!
 これぞ、私が思い描いていた通りのおすが……
 あらら? その角は? えっ、尻尾まで!?

 まじまじと見ると、その顔色は悪く、とても不健康そう。
 思い描いていたお姿とは、少しばかりでなく違って見えた。

「君……は……? 誰?」
「あっ、私は聖女ジョセフィーヌと申します!」

 神様も目を瞠っている。
 人間が唐突にお邪魔したことに驚いているのだろう。

「聖女? それで、ジョゼは何しに魔王城に? 魔王と聖女って、まさかそういう展開……」
「ま、魔王城なのですか、ここは?」

 つまり、目の前にいるのは神様ではなく魔王様!?

 一番星よりも眩しかったはずの感動は、真っ暗な恐怖にすり替わった。
 歯がカチカチ鳴り始める。
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