あざと男子の有坂美くんと、キャラメルなわたし
2話
〇冒頭・教室
有坂美が髪の毛を金髪に染めてきたことに、驚いて固まる心和。
心和(私のために髪を染めたってこと!?)
困惑顔の心和と、にんまり笑っている有坂美は見つめ合っている。
女子生徒「有坂美くん、どうしたの!?」
女子生徒「いきなり髪の毛染めちゃって……」
有坂美が金髪になったことに、女子生徒たちも困惑している様子。戸惑いの声が飛び交う。
女子生徒「かっこいい~」
女子生徒「似合ってる! オーラが増したような感じ」
きゃーと騒ぎ出す女子生徒たち※困惑顔の次のカットでコロッと表情を変える
予想外の反応にきょとんとする心和
一気に有坂美に群がる女子たち。
囲まれた有坂美は、咄嗟に心和に助けを求めて手を伸ばす。
一瞬躊躇したものの、グッと目をつむって有坂美の手を引っ張る心和。
女子たちの群れから抜け出した有坂美に、心和は焦った様子で問いかける。
心和「有坂美くん! いったいどうして!?」
有坂美「……思いつき?」
有坂美は、うーんと考えながら斜め上を向きながらぽかんと答える。
心和「思いつきで、そんな……」
有坂美「昨日見た素の心和ちゃんの方がいいと思ったから」
じっと真剣な顔で心和を見つめる有坂美。
有坂美「殻にこもって自分に嘘つくより、泣きべそかいたり叫んでた心和ちゃんの方が人間ぽかった」
心和「人間ぽいって……」
有坂美「それに、髪色のせいでトラウマが出来てしまってるなら……」
有坂美「心和ちゃんが殻を作るのは違うと思ったから」
真剣な顔の有坂美のアップカット。
いつもと違う雰囲気の有坂美に、心和はドキッとする。
心和「でも……有坂美くんまで白い目で見られたりしたら……」
有坂美「それもいいんだ」
心和「なんで!? それはすごく辛いことだよ!?」
有坂美「心和ちゃんの辛さを知りたいと思ったから」
心和「なに言って……」
ドキリとして、顔を赤くさせる心和。
高野「有坂美!? どうしたんだ! その髪色は」
廊下を通り過ぎた高野先生が有坂美の髪色に気づいて注意をする。
有坂美「やばっ」
額にぴくりと青筋が立つ高野。
クラスメイトたちは、ごくりと息をのむ。
有坂美は心和の手を引いて、その場から走る。
有坂美「捕まったら時間かかりそうだし」
心和「あ、有坂美くん!?」
高野が覗いていたドアの反対から、心和と有坂美は出ていく。
<時間経過>
〇学校・廊下(朝)
走った心和と有坂美は、息を切らして誰もいない廊下で止まる。
はぁと浅く息をしている。
有坂美「ははっ。今頃、高野怒ってるかなー?」
有坂美はへらりと笑ったあと、真剣な表情になり、心和をじっとみる。
有坂美「俺さ、ちょっとだけ心和ちゃんの気持ちわかったかも」
心和「え?」
有坂美「今日学校に登校するとき、街中ですっごい視線を感じた……」
有坂美が通学路を歩いているシーンをダイジェスト的にいれつつ、有坂美の台詞を乗せる。
・有坂美が街中を歩いていると、好奇な視線を浴びる様子
・ひそひそと噂話をされる様子
有坂美「ただ、制服を着ているだけなのに」
有坂美「ただ、いつもの通学路を歩いているだけなのに」
有坂美「今まで浴びたことのないような、なんかイヤーな感じの視線だった」
有坂美の話に、心和はごくりと息をのむ。
心和(その視線、知ってる)
心和(私が浴びてきたもので、私が嫌いな視線だ)
心和は思い出して、少し俯いてしまう。
そんな心和を見て、なにかを察した様子の有坂美。
有坂美「そんなに……僕、明るい髪色似合ってない?」
心和「え……似合ってるよ?」
心和の気持ちを察した有坂美は、空気を変えるためにへらっと笑う。
有坂美「よかったー。なんかさ、ちょっとアイドルっぽいよね?」
前髪をさらりといじって、ニコッと笑う有坂美。
心和(黒髪の有坂美くんもかわいかったけど……)
心和(金髪の有坂美くんは、さらに磨きがかかってる)
心和(人気アイドルグループにいても、おかしくないかも)
有坂美「心和ちゃんは、黒く染めたりしなくていい。ありのままの自分でいてよ」
有坂美「僕とおそろいだから、もう悩み解決だね?」
心和「いや、あのね。全然解決になってないかも……」
しゅんとなる有坂美。※子犬のようなデフォルメ絵
有坂美「そっかー。同じ髪色になったら何か変わるかなーって思ってたけど、やっぱり無理かぁ」
有坂美は、しょぼんと悲しそうな顔をする。
心和(本当に私のことを考えてくれた……?)
有坂美「わかった! いいこと思いついたよ」
瞳をキラキラさせる有坂美だが、心和はなんだか嫌な予感がしてぎくりとする。
有坂美「これからは、僕がそばにいてあげるよ」
心和「いやいや、なんでそうなるの!?」
有坂美「四六時中一緒にいてあげる」
心和「えぇ!?」
心和(どうしてそうなるの!?)
心和(あざと男子の有坂美くんの思考回路は理解できない)
心和「それはそれで、新たな問題が生まれるよ」
有坂美「一緒にいたら、イヤな視線から守れるよ?」
真剣で無垢な瞳を心和に向ける有坂美。
心和は戸惑いながらも、ちょっと心が和む。
〇場面転換・教室・休み時間(昼)
自分の席に座る心和。女子生徒たちの視線が集まる。
女子生徒「ねぇ、誰か話しかけてよ」
女子生徒「有坂美くんとどんな関係なのか聞いてみてよ」
女子生徒「だって成海さんっていつもすんとした顔して、何考えてるかわかんないんだもん。話しかけづらいー」
有坂美と心和の関係が気になるクラスメイトたち。
クラスメイトの声が聞こえている心和は気まずい表情。
※心和が少し怖いという印象を持ってるため、みんななかなか話しかけられない。
心和(私って……こんなにみんなに怖がられてたんだ)
心和(昔のことがトラウマで、自分から殻を作ったけど)
心和(ここまで、怖がられているとは思ってなかった)
予想以上に距離感を感じて、ツンケンした自分のせいなのに、涙目の心和。
文乃「成海さんって、有坂美くんとどういう関係なの?」
皆が話しかけるのを躊躇する雰囲気の中、陽気に話しかける文乃
※文乃はクラスメイト。黒髪のボブカットが似合う明るくてはっきりしている性格
心和「へ? えっと……有坂美くんとは」
心和(クラスメイトから話しかけられた!?)
初めてのことに歓喜する心和。表情も明るくなる。
心和「いつも挨拶してくれたりはしたけど、対面してきちんと話したのは、昨日はじめてだと思う……」
文乃「付き合ってるとか?」
心和「ま、まさかっ!」
心和は顔をぶんぶんと横に振って否定する。
心和と文乃の背後で、心和と有坂美の関係を聞いたクラスメイトたち。ホッとした様子で散らばっていく。
クラスメイトの関心が消える中、文乃はまだ心和のそばにいる。
文乃「成海さんって、いつもきりっとした表情で冷静だから、とっつきにくい感じだと思ってたよ」
※心和の殻をかぶった表情のカット。手は握りしめている
文乃「なんか、話してみると印象違うね? もっと怖い人なのかと思ってた」
心和「そうだよね……」
しゅんと心細くなる心和。
心和の頭の中で有坂美の言葉がフラッシュバックする。
有坂美「心和ちゃんは、ありのままでいいよ」
有坂美の言葉を思い出して、ぎゅっと唇を噛む心和。
心和「ほ、本当は、きりっとした性格じゃないんだ」
心和「この髪色のせいでいじめられるのが怖くて、強いふりしてたの……」
文乃「ふーん」
値踏みするように心和を見る文乃。勇気を出した心和はドキドキしている。
心和(言ってしまった。本当はこんなに弱いと知られたら、またいじめられたりするかもしれない……)
文乃「ツンケンしてない今の方が全然いいじゃん!」
心和「ほんと?」
文乃はにっこり笑って明るい。
ホッとした心和は涙目になる。
文乃「え、泣いてない?」
心和「ちょっと勇気出したというか、一気に気が抜けちゃって……」
心和(自分を守るために、友達なんて作らない方がいい)
心和(そう思っていたけど、誰かと話すって楽しい)
心和は涙を拭いながら、柔らかく笑う。
楽しそうに話す心和と文乃の元に有坂美がやってくる。
有坂美はしゃがんで、机に両腕と顔をちょこんと乗せる。※あざとい感じ
有坂美「ストップ! なにその笑顔!」
有坂美「心和ちゃんの殻を破るのは僕なんだけど?」
文乃「え……?」
有坂美の言うことに、文乃は両手で口元を抑えて、有坂美と心和を交互に見る。※有坂美と心和がいい関係だと誤解する。
心和「ちょ、ちょっと……有坂美くん、なに言ってんの?」
有坂美「ん~。心和ちゃんがクラスメイトと話すのは嬉しいはずなのに……」
有坂美「なんでだろう。ちょっとモヤモヤする!」
頭を左右にくねくね揺らしながら考える有坂美。
ぱっと閃いた表情になる。
有坂美「あ、僕嫉妬してるのかも!」
心和「嫉妬!?」
有坂美「心和ちゃんの笑顔が他の人に向けられて嫉妬しちゃったみたい♡」
有坂美「心和ちゃんを救い出す王子は僕がいい」
心和「なっ……」
有坂美の甘い言葉と、アイドルスマイルに顔が真っ赤に染まる心和。
有坂美「ねぇ、文乃ちゃんに笑顔向けないで、僕に向けてよ?」
有坂美「僕じゃイヤ?」
上目使いで覗き込むように、有坂美は心和を見つめる。※きゅるんとした瞳でかわいらしい
心和(かっ、かわいい)
文乃(かっ、かわいい)
アイドル顔負けにかわいい有坂美にきゅんとする心和と文乃。
心和「だ、だめじゃ……」
思わず「ダメじゃない」と言いそうになる心和。
女子生徒「成海さーん。男子たちが廊下で呼んでるよ?」
廊下から成海を呼ぶ女子生徒。
呼び出しの声で、心和は最後まで言わずに終わる。
心和「……ちょっと行ってくる」
心和はすんと無表情になり、廊下の女子生徒に駆け寄っていく。※ツンケンする癖が抜けきらない。
残された有坂美と文乃。
文乃は意味深に有坂美を見つめる。
文乃「ふーん」
有坂美「なに~? 変なものを見るような目で見ないでよ」
文乃「でも意外だったなぁ……みんなのアイドル有坂美くんが、誰かのためになにかするなんて」
文乃「みんなに平等みんなのアイドル有坂美くんって印象だったから」
文乃「だってさ、髪の毛を金髪に染めるだなんて、普通そこまでする!?」
有坂美「ちょっと文乃ちゃん。辛辣すぎない!?」
文乃の厳しめの分析に、有坂美は涙目になる
文乃「ごめんごめん。でも不思議でさー」
有坂美「まぁね。僕も最初は少しでも心和ちゃんが前向きなってくれならいいなーって軽い気持ちだったんだけど……」
有坂美「それに、明るい髪の毛にしてみたかったしね♡」
怪しんだ視線を向ける文乃に、ニコッと笑う有坂美。
文乃「有坂美くんの思うままじゃん」
文乃「成海さんがツンケンしてるのが自分を守る盾だったって知れたし、有坂美くんは女子たちにきゃーきゃー言われたし」
有坂美「きゃは♡」
有坂美はニコッと萌え袖を口元に当てながらきゅるんとアイドルスマイルをする。
次のコマで有坂美の表情をがらりと変える。いつもの可愛らしさは消え、無表情のまま廊下にいる心和を横目で見る。※呼び出されてドア付近にいる心和の小さいカット
有坂美「心和ちゃんが、髪色のことなんて気にせずに、皆と仲良くなれたらいいなって思ってたんだけど」
有坂美「それだけじゃ、足りなくなってきた、かな?」
有坂美「今は違う感情も出てきて、困ってんだよなぁ……」
有坂美は無表情のままぼそっと呟く。
文乃「ん? 何か言った?」
有坂美「なんでもないよ?」
有坂美は、またアイドルスマイルに戻る。
心和がドア付近で男子生徒と話しているシーンをいれつつ、有坂美のモノローグを乗せる。
・心和が戸惑った表情であせあせしている様子
・心和が「気にしないで」と両手を振って、苦笑いをしながらあせあせしている様子。
※会話や吹き出しはなしだが、シーン的には男子生徒は心和に対して昨日言い過ぎたことを謝っている
→心和は「そんな、わざわざ謝らなくて……大丈夫」とあせあせしている様子。
有坂美(みんなのアイドルあざとい有坂美くんのままだと……)
有坂美(誰かにもってかれちゃうかもね)
有坂美(その前に……)
小悪魔にフッと笑う有坂美。