あざと男子の有坂美くんと、キャラメルなわたし
3話
〇冒頭・学校・廊下(昼)
男子生徒「昨日はほんとごめん。さすがに言いすぎたわ」
心和の前で両手を合わせて謝っている。※2話で心和に酷いことを言ったことを謝っている。
心和「いや、そんな……」
男子生徒A「ごめん。さっき文乃と成海さんが話してることちょっと聞こえちゃったんだよ」
男子生徒B「あぁ、態度悪くて性格悪い奴って思ってたんだけど……」
心和(ぐさっ)※心に衝撃を受ける心和のデフォルメ絵
心和(私の印象が思っていたより、最悪だった)
男子生徒A「でも……それも作ってた性格って聞いて」
男子生徒B「なぁ? 俺たちがやいやい髪色のこと言ってたせいかなーって」
頭をかきかきしながら、しょんぼりする男性生徒たち。
心和「そ、それは……私が勝手に殻を作ってただけだから」
心和「みんなのせいじゃないよ……」※心和は無理してぎこちなく笑う。
空気が和んでくる。男性生徒たちにも、少し笑顔が戻る。
腕がスッと入ってくる※ 有坂美の腕
有坂美「話って終わったぁ?」
男子生徒A「有坂美……俺たち成海さんに謝ってたんだ」
男子生徒B「酷いこと言っちゃったなって」
有坂美はニコニコ笑う。
有坂美「そっかそっか。謝ってスッキリしたね?」
男子生徒A「ん? まぁ、わだかまりはとけたかな?」
男子生徒B「ああ、よかったよ。成海さんの笑顔も初めて見れたし」
男子生徒「もっと笑った方がいいよ。な?」
2人は顔を見合わせて安心しきった様子で笑う。
心和は無理して苦笑いを浮かべる。
有坂美「それはよかったー」
有坂美「謝ってスッキリするのは、加害者の方だけだからね」
辛辣の一言をずばっという有坂美。表情はこわい。
有坂美「お前らが言った棘のある言葉は、謝罪されたところで、心和ちゃんの心からは消えないんだよ」
有坂美「暴言を受けたらな。その言葉を消す消しゴムなんて存在しないんだよ」
心和(……有坂美くん)
有坂美の言葉にずきんとする心和。
有坂美の豹変っぷりに、ぽかんと口を開けたまま固まる男子生徒たち。
有坂美は心和の手を握り、その場から立ち去そるとする。
心和「有坂美くん!?」
男子生徒たちの横を通り、教室を出た有坂美と心和。
有坂美は立ち止まると、くるりと振り向く。
有坂美「悪いけど……さっきの笑顔じゃないから」
男子生徒「え?」
有坂美「さっきの心和ちゃんは、無理して笑顔を作っていただけ」
有坂美「本当の笑顔は、もっとかわいい!」
勝ち誇った笑顔で言い捨てる有坂美。
心和(有坂美くん――)
心和(さっき、無理して笑ったのに気づいてくれたんだ)
心和(それに、全部私の言いたいことを言ってくれた)
心和は手を引かれて廊下を歩いていく。
有坂美の背中をじっとみる心和。
心和(有坂美くんのいうとおり、謝られても、心は泣いたまま)
心和(でも、でも――。今は心がほんのりあたたかい)
心和(きっと、有坂美くんの言葉のおかげでだ)
〇学校・中庭(昼)
学校の中庭。緑に囲まれている。
心和「有坂美くん、ありがとうね。私の代わりにいってくれて」
有坂美「いや、あいつらにはきちんと言わないと。男って気づけないからさ」
有坂美「文乃ちゃんと仲良くなれそう?」
心和「うん、仲良くなれ……(そう)」
最後まで言う前に心和は止まる。
心和(仲良くなれそう?)
心和(本当は仲良くしたい。だけどやっぱりまだ怖いんだ)
心臓がバクバクなる心和。
心和(あの時もそうだった)
〇回想シーン 心和・小学生時代
小学生時代の心和。今と同じ髪色。
珍しくて、クラスメイトからいじめを受けている。
友達A「心和ちゃんってさ、どうして髪の毛が茶色いんだろうね?」
友達B「あれは絶対に染めてるよ~」
友達C「いーけないんだっ!」
友達D「心和ちゃんってずるいよね~」
後ろ姿の小学生・心和。
心和を囲むようにして、ひそひそと話す小学生時代のクラスメイトたち。
結奈「違うよ! 心和ちゃんの髪の毛は地毛なんだから!」
※結奈は心和の小学生時代の親友。正義感が強くて素直な子。
結奈は、涙目の心和の前に立ちはだかって、庇うように両手を広げた
ハッとびっくりする心和。
心和「結奈ちゃん……」
結奈「結奈は、心和ちゃんが嘘つきじゃないってこと、ちゃんとわかってるからね」
にっこりと笑って振り向く結奈。
心和はホッとしたように涙を拭う。
心和「結奈ちゃん、ありがとう」
心和(いじめられるのは辛いけど、結奈ちゃんがいれば大丈夫)
心和(だって、結奈ちゃんは、私のこと信じてくれるから)
心和は、涙をためた瞳でニコッと笑う
仲良さそうな心和と結奈のカット
〇場面転換
別の日。無表情で悲しそうな結奈。
結奈「心和ちゃんってさ……犬養くんのこと、好き?」
結奈は遠慮がちに聞く。
心和はぎくりとする。
心和「え……す、すきとかじゃないよ?」
結奈「そっか……なんかね、心和ちゃんが犬養くんの気を惹くために髪の毛を染めてるって噂で聞いたからさ」
心和「そ、そんなこと嘘だよ!」
結奈はホッとしたようにぎこちなく笑う。
結奈「よかった~。実は犬養くんのこと気になってて」
心和「そ、そうなの!? 応援する」
結奈は嬉しそうに笑う(数コマ前のぎこちない笑顔ではなく)
<時間経過>
表情は見えず、結奈の口だけのアップカット
結奈「心和ちゃんの嘘つき! 犬養くん、心和ちゃんが好きなんだって」
心和「え……」
結奈「その髪色だって、気を惹こうとしてるんでしょ」
心和「ち、違うよ……! こ、これは生まれつきで……」
結奈「心和ちゃんの……嘘つき!」
心和はショックを受けて立ち尽くす。
(回想終了)
〇現代へ 学校・中庭
ぎゅと手のひらを握る
心和(やっぱりあの時のことが怖い)
心和(大好きな人に、嘘つきと言われるのが怖い)
有坂美「心和ちゃん? 大丈夫?」
固まる心和を心配して顔を覗き込む有坂美。
心和はハッとして顔をあげる。
心和「ちょっと昔のこと思い出しちゃって」
心和の様子をじっと見つめる有坂美。
有坂美「子供の頃の心和ちゃんに会いたかったなぁ~」
有坂美「そしたら、僕がずっと守ってあげたのに♡」
有坂美の言葉に、ドキドキして頬が染まる心和。
心和(有坂美くんの言葉は、私の心にまっすぐ届く)
瞳に涙を潤ませた心和は、満面の笑みを浮かべる。
心和「……ありがとう」
心和(有坂美くんのおかげで、心の中にあったつかえが一つとれたような気がする)
有坂美「ちょっとまって。そんな風に笑わないで」
表情を見せずに下を向く有坂美のカット。
有坂美の反応に、どきんとイヤな予感が走る心和。
心和(私、また間違えた?)
少し考えた心和はハッと気づく。
心和「ご、ごめん。もしかして、私の笑顔汚かった!?」
心和(そうだよ……極端に笑う回数が減っていた)
心和(みんなのアイドル有坂美くんの笑顔を比べたら、ぎこちなくて変だったんだ)
ぎこちなく笑う心和のデフォルメ絵のカット
※心和は自分の笑顔がへたくそで有坂美を困らせたと解釈する。
心和の発言に、有坂美はきょとんとした後、声を出して笑う。
有坂美「あははっ」
有坂美「心和ちゃんの笑顔はかわいいよ?」
心和「え、だったらどうして――」
有坂美「あまりにも可愛いから、僕だけのものにしたくなっちゃっただけ」
有坂美は、顔を心和に近づけて覗き込む。
心和(え、えー。それって、どういう意味!?)※顔を真っ赤にさせて照れる心和
心和と有坂美、至近距離のアップカット。
〇場面転換 学校・廊下
二階、窓から心和と有坂美を見つめる人影※顔は映っていない。
※中庭で心和と有坂美は至近距離で話している。
犬養「あれ? あの髪色……こより?」
鼻から下のカットで、全部の顔は見せないまま。