あざと男子の有坂美くんと、キャラメルなわたし
4話
〇学校・教室 ホームルーム前(朝)
自分の席に座って、3話のラストを思い出す心和。
心和(有坂美くんの言葉、いったいどういう意味なんだろう)
心和(もしかして……)
顔を真っ赤にさせて、顔を左右に振る心和。
心和(みんなのアイドル有坂美くんが、私のことなんて)
心和(そんなこと絶対にありえない)
文乃「ねぇ、心和聞いてる!?」
心和の前の席に座り、心和と話していた文乃。
文乃の言葉に自分の世界にいた心和は呼び戻される。
心和「ご、ごめん……ふ、文乃ちゃん、」
文乃と名前で呼ぶことを恥ずかしがる心和。
文乃「なんでちょっと恥ずかしがってんのー」
文乃「お互い名前で呼び合おうって話したばっかりじゃん」
ジーンと感動する心和のデフォルメ絵。
文乃「ん? どうした?」
心和「へへっ。こういうの久しぶりで嬉しくて」
照れたように笑う心和に、親心で可愛いと感じる文乃。
噛み締めて何度もうなずく。
文乃「心和に沼るのもわかるわー。うんうん」
心和「ぬ、ぬまぁ?」
文乃は有坂美のことを思い浮かべながら何度もうなずく。※心和にはなんのことだか、伝わっていない。
文乃「沼と言えばさ、B組にきた転校生。沼男らしいよ?」
心和「あぁ……少し前に転校生きたんだっけ」
※心和たちはA組。
※B組に転校生が来ていたことを読者に提示(犬養)
文乃「女子に人気らしいよ~?」
心和「へぇ~」
文乃「うちのクラスのあざと男子有坂美くんと、人気が並んだりしてね?」
ししっと笑う文乃。
有坂美「え~~。不動の人気ナンバーワンの座が奪われちゃう?」
心和たちの元にきた有坂美は、自然な流れで会話に参加する。※ぶりっ子っぽく目をきゅるんとさせる
心和は昨日の有坂美とのやり取りがフラッシュバックし、どきりとする。
文乃「有坂美くんは、あざと男子で。転校生くんは、男らしい沼男らしいよ?」
有坂美「沼男……」
文乃「まぁ、彼氏にするなら、あざと男子より、男っぽい沼男の方がいいなぁ~」
背筋を伸ばしながら言った文乃。
有坂美は怖い血相で文乃を睨みつけるデフォルメ絵。※有坂美は心和の前で言ってほしくなかった
文乃は有坂美に睨まれ、気まずそうに話を変える。
文乃「こ、心和は? あざとい男子と、沼る男子。どっちがいい?」
心和「あざとい男子と、沼る男子……」
心和は、うーんと考え込む。
有坂美は心和の返事が気になり、じっと期待の眼差しを向ける。
心和「沼男……」
心和はぽつりとつぶやく。
心和の発言に、ずーんと分かりやすく肩を落とす有坂美。
心和「沼男っていうのが、私わからないかも……」※心和は沼男を選んだわけではなかった。
文乃「沼から抜け出せなくなるほどに夢中になってしまう男のことだよ」
心和「抜け出せなくなる……か」
〇ホームルーム(昼)
数日後に行われる課外授業・遠足の班決めを行う。
担任「課外授業の班決めをしますー」
担任「男女5人組を、適当に作って~。任せるわ~」
担任の声掛けに沸き上がるクラスメイト達。
反して、ガッカリと嫌そうな心和。
心和(自分たちで好きに班決め)
心和(私の苦手なワードだ)
ドギマギする心和の元に文乃が駆け寄ってくる。
文乃「心和、一緒の班になろう?」
心和「文乃ちゃん~~」
心和は、嬉しくて涙目になる。
文乃「あとは、男子グループと組もうか」
心和「男子のグループは……」
心和はちらりと有坂美を見る。
有坂美には女子たちが群がっている。
心和(有坂美くんと同じ班になれたら。って思ったけど)
心和(人気者の有坂美くんと同じグループは難しいよね)
諦めて他の男子たちに声を掛けようとする心和と文乃。
有坂美「みんなごめん! 今回は僕決めてるんだ」
有坂美は、群がる女子たちをかき分けて心和の元に駆け寄ってくる。
有坂美「僕たち、一緒にいないといけないからさ」
有坂美は、心和と肩を並べて、笑いかける。
クラスメイト「「えぇーー」」
女子生徒「一緒にいないといけないってどういう意味!?」
女子生徒「どういう関係なの!?」
一気に心和に群がる女子生徒たち。
心和はあせあせしながら対応する。
心和「い、意味なんてないよ?」
心和(また誤解が広がるような言い方して……)
心和がちらっと有坂美を見ると、ちょっと小悪魔っぽく笑う有坂美。
心和はドキッと胸が高鳴る。
教室はワーワーと盛り上がる。
クラスが盛り上がる中、心和と文乃のは、こそっと話す。
文乃「課外授業楽しみだね」
心和「……うん」
心和(私の心は、わくわくなような)
心和(ドキドキするような)
心和(いろんな感情が混ざり合っていた)
〇場面転換・学校・廊下(昼)
窓から差し込む太陽の光で、心和の髪の毛がきらりと反射する。
心和は廊下を歩きながら、思い出したように自分の髪の毛を触る。
心和(有坂美くんが髪の毛を染めてから、私のことコソコソいう人いなくなったな)
心和(文乃ちゃんとも仲良くなれて、笑ってることもいつの間にか増えた)
心和(全部有坂美くんのおかげだ……)
廊下を歩いていた心和は、高野先生が前から歩いてくることに気づく。※高野先生は一話で心和に厳しい注意をしていた先生
グッと身構える心和。
高野は気まずそうに頭をぽりぽりかいて、何も言わずに通り過ぎていく。
心和(あれ、高野先生と会うと、必ず髪色を注意してきたのに……)
高野「成海!」
心和が不思議そうに考えていると、立ち止まった高野が声を掛ける。
心和「は、はい……」
高野「あー。その、悪かったな」
心和「え?」
高野は気まずそうな表情で心和に謝罪する。
また髪色のことを注意されると身構えた心和は、ぽかんとする。
高野「その、髪色。地毛は本当らしいし、それに、黒染めはアレルギーで出来ないんだってな」
心和「はい……」
高野「規則違反するたびに、適当な言い訳をいう生徒を見てきたから、成海のことも決めつけてしまった」
高野「今まで、厳しく言って悪かったな」
謝罪する高野に、心和は疑問が浮かぶ。
心和(今までも何度も説明してきた)
心和(だけど、信じてくれなかったのに)
高野「有坂美が何度も俺に言ってきたんだよ」
心和「有坂美くんが……?」
不思議そうにする心和に、高野は説明する。
有坂美が職員室で高野に何度も心和のことを説明するシーンをダイジェスト的にいれる。※簡単な回想を数コマで
・有坂美が軽く頭をさげながら、高野に説明する様子
・座っている高野を見下ろして、睨みつけながら説明する様子。※ブラッグな有坂美のデフォルメ絵
心和(また、有坂美くんに助けてもらったんだ……)
心和は感情が込み上げて、手のひらをぎゅっと握り、胸元に持ってくる。
心和「有坂美くんに、お礼言わないと……」
心和は高野に軽く頭を下げると、有坂美を探しに廊下を早歩きする。
心和(私は有坂美くんがいなければ、今もきっと高野先生に厳しい注意を受けて、悲しい気持ちになってたはず)
心和(有坂美くんがいなければ、学校で好奇な目で見られ続けてた)
心和(本当の自分を出せたのは、有坂美くんのおかげだ――)
走りながら心和のモノローグを乗せる。
心和は腕を引かれて、立ち止まる※この時、顔は見えていない。
心和(え?)
足が止まった心和は振り返って、腕を掴んできた人物を見る。
目を丸くさせて驚いた表情の心和。
心和「え、なんで……?」
犬養「やっぱり心和じゃん!」
心和「い、犬養くん……!?」
心和の手を引いたのは、犬養。※回想シーンで出てきた元同級生
犬養「心和だろ? すぐわかった。やっぱりその髪色目立つな」
心和は髪色のことを言われてずきんと胸が痛む。
犬養「少し前に転校してきたんだよ」
犬養の言葉に、心和は文乃との会話が浮かぶ。
心和「転校生って犬養くんのことだったんだ」
犬養「知り合いがいてよかった。そうだ、学校案内してくれよ」
心和「……同じクラスの子に頼んだら?」
心和は困った表情で、犬養の申し出を断る。
犬養「そんな水臭いこというなよ~」
犬養はグイっと心和の腕を掴んだ歩き出す。
心和「ちょ、い、犬養くん!」
腕を引かれて困った様子の心和
有坂美は、繋がれていた手に割って入る※腕だけのカット
有坂美「嫌がってるの見えてないの?」
有坂美の全身カット
有坂美は無表情のまま心和をっ引き寄せる
心和「な、有坂美くん!?」
犬養「あー、悪い悪い! でも、嫌がってないよな?」
曇らせた表情をぱっと切り替える犬養
犬養は悪びれもなく、へらりと笑う
心和「えっと……」
有坂美「僕がイヤだから」
心和「へ?」
有坂美「いこう」
戸惑う心和の腕をひいてその場から立ち去る有坂美
犬養は有坂美と心和の後ろ姿をじっと見つめる。
犬養「なんか……おもしろくないな」
犬養は心和と有坂美の後ろ姿を見つめながら、ぼそっと呟く
〇学校・廊下(昼)
心和の手を引いたままの有坂美。
(犬養から引き離すために手を引いていた)
立ち止まった有坂美は口を開く。
有坂美「さっきのって、沼男?」
心和「ぬ、ぬま!? あぁ、文乃ちゃんが言ってた……」
心和「そう、転校してきたみたいでね」
有坂美「ちょっと親し気じゃなかった?」
質問攻めする有坂美。※拗ねている感じであざとい顔
気迫を感じる問い詰め方に、戸惑う心和。
心和「う、うん。実は小学校の同級生で……」
有坂美「ま、まさか。心和ちゃんを追いかけてきたとか!?」
心和「そんなはずないよ! 会ったとき犬養くんもびっくりしてたもん……」
グイッと身を乗り出した有坂美は、心和の言葉を聞いてホッと肩をなでおろす。
喜怒哀楽が激しい有坂美を不思議そうに見つめる心和。
心和「有坂美くん、もしかして……犬養くんのこと嫌い?」
心和(やけに犬養くんのこと気にしてるような)
有坂美「キライ!」
ほっぺを膨らませて怒る有坂美※あざとい怒り方
心和「そうだったの!? 二人がすでに知り合いだなんて知らなかったよ」
有坂美「違うよ。全然知り合いじゃない。さっき初めて話した」
心和「あれ? 嫌いって言わなかった?」
有坂美「キライだよ……」
有坂美は真剣な顔で心和の顔を覗き込む。
有坂美「心和ちゃんに近づく男は、みんな嫌い」
至近距離で言われ、男の顔を見せてくる有坂美に翻弄される心和。
心和「あ、有坂美くん。あざとすぎ!」
心和は心臓がドキドキしはじめる。動揺を隠すように、視線を逸らす心和。
有坂美「あざといって……?」
心和「そういうこと言われたら、女の子はドキッとしちゃうんだよ」
心和(そうだよ。あざと男子の有坂美くんは、きっと誰にでもそうなんだ)
有坂美「僕がドキッとさせたいのは、心和ちゃんだけだよ?」
心和が顔を上げると、有坂美は真剣な表情※男の顔
いつもの可愛い有坂美とのギャップにドキリとする。
有坂美「だから僕以外の男にドキッとしないでよ」
有坂美は、心和の髪をなぞってから、ゆっくり心和の頬に触れる。
顔を静かに近づける。※キスしそうな感じ。