あざと男子の有坂美くんと、キャラメルなわたし
5話
〇冒頭・課外授業に向かうバスの車内(朝)
ぶすーっと膨れる有坂美。※あざといかわいい
窓際に座って外を眺めながら、怒りながらもキャラメルをモゴモゴ食べている。
(この時、隣の席はまだ空席)
〇回想シーン 学校
4話続のシーン
至近距離で詰める有坂美を、心和は避ける。
心和「ご、ごめんなさい」
心和「ずっと殻にこもってたせいか、今の私には情報量が多すぎて、ショリシキレマセン……」
心和は体が硬直し、かたこと口調になる。
プシューっと心和がパンクするデフォルメ絵。
(回想終了)
〇元の現代へ 課外授業に向かうバス車内
有坂美(「ごめんなさい」って、僕フラれたってこと?)
有坂美(いや、心和ちゃんの場合は、本当に処理しきれなかったのかも)
心和の「ショリシキレマセン」の時のデフォルメカット。
有坂美は思い出し笑いをする。
バスに乗ってきた心和と文乃。
席を探していた心和は、有坂美と目が合う
有坂美「おはよ! 心和ちゃん一緒に座ろうよ」
有坂美は心和を誘って、隣の席をポンポンと叩く。
心和「そ、それは、だめだよ」
心和「わ、私……文乃ちゃんと座るっ!」※心和は照れた感じで挙動不審
有坂美はガーンといった表情。断られてショックを受ける。
しょんぼり不貞腐れた顔で窓の外を見る有坂美。
犬養「隣座っていい?」
有坂美「うんーーーどぞーー」
やさぐれ気味の有坂美は、適当に返事をする。
犬養「あれ? もしかして、あざと男子くん?」
犬養に話かけられて、やっと隣を見る有坂美。
犬養が座っていたことに驚く。
有坂美「なんで……B組が?」
犬養「このバス、A組全員とB組の半分がのってるから」
A組全員とB組の半分が同じバス。
※図などでわかりやすく説明。
犬養「心和と同じクラスだよな?」
犬養「相変わらず目立つよなーあの髪色」
犬養が心和のことを馴れ馴れしく話すので、ムっとする有坂美。
犬養「なんか甘い匂いする。キャラメル? 俺にもちょうだいよ」
犬養は手を差し出す。有坂美はキャラメルを渡そうとして、停止する。
有坂美「……渡さない!!」
有坂美「ぜったいに!!!」
ムムっと敵意丸出しで拒否して、威嚇する有坂美。
※キャラメル=心和のことを思い出した
犬養「なんだよー。けちー」
犬養「ってか、あざと男子くんは染めてるの? この学校では規則違反じゃね?」
有坂美「いいんだよ。この色で」
窓の外を向く有坂美
有坂美「……少しでも心和ちゃんの心に残りたいんだよ」
有坂美はぼそっという。
〇バス車内(朝)
心和視点。
心和と文乃は隣同士で席に座っている。
頬を赤らめて自分の行動を反省している心和。
心和「有坂美くんに冷たい言い方しちゃったかな」
文乃「あー。さっきの? 大丈夫でしょ。あざと男子はあんなことでへこたれないよ」
心和「そうだといいな……あ、メールで謝ろうかな」
スマホを取り出して、メールを送ろうとする心和。
心和「あ! どうしよう……」
文乃「どうしたの?」
涙を浮かべて泣きそうな心和。
心和「昨日楽しみすぎて、うきうきしてたら、充電するの忘れてた……」
心和のスマホは黄色いマークがついている。
文乃「大変! なるべく使わないようにするしかないね!」
心和「うん……そうする。節約して使う」
涙目でしょんぼりする心和。
文乃「大丈夫だよ。ハイキング中はスマホの使用禁止だし」
文乃「有坂美くんと楽しく過ごそうよ?」
有坂美という言葉にドキリとする心和。
ちらりと有坂美の後ろ姿を見る。
心和(有坂美くんは髪色もそのまま。目立つからすぐに見つけられる)
心和(有坂美くんをみると、心臓がドキドキしてる)
心和(だって、あんなこと言われたから、まともに顔見れないんだもん)
心和(今日は班行動だってあるのに、私大丈夫かな……)
〇課外授業・遠足・陽花里街記念公園
心和の学年の課外授業。壮大な大きさの公園。約2キロのハイキングコースがある。
陽花里街記念公園にて、グループごとにハイキング。
先生「まずは、12時までに野外炊事する場所まできてください」
先生「必ず班行動すること」
キャッキャとはしゃぐ生徒たち。
心和はリュックの持ち手を握りしめて気合を入れている。
心和(2キロ歩くのは大変そうだけど)
心和(文乃ちゃんと話しながら歩いていたらあっという間だろうなぁ)
心和(それに……)
心和はちらっと有坂美をみる。
心和(有坂美くんもいるし)
心和(さっきはちょっと避けちゃったけど、普通に話せるかな)
ドキドキと胸元を抑える心和。
有坂美「心和ちゃん、疲れたらリュック持ってあげるからね?」
ひょっこり現れた有坂美にドキッとする心和。
心和「あ、ありがとう。でも自分で持つからね」
心和「有坂美くん、あ、あのね……」
心和は話しかけようとするが、有坂美狙いの女子たちが集まってくる。
女子生徒A「ねぇ、うちらの班と一緒に行こう?」
女子生徒B「有坂美くん、ジャージ姿もかわいい~」
班行動といえ、目的地が一緒のため、皆で歩くことに。
心和は有坂美と話せず、残念そう。
心和は文乃と肩を並べて、自然あふれる道を歩く。
文乃「有坂美くん、とられちゃったね?」
心和「取られたなんて。みんなの有坂美くんだから」
慌てる心和をほほえましく見つめる文乃。
文乃「大丈夫。野外炊飯は完全に班行動だから。その時に話したら?」
心和「そうだ……ね。話せるといいな」
心和は前を歩く有坂美を見つめる。
女子たちに囲まれている有坂美を見て、ちくりと胸が痛む心和。
〇野外炊飯会場
班ごとにお昼ご飯を自炊する。
心和と文乃と有坂美は同じ班。
有坂美の周りにいた女子たちも、作業に取り掛かって、有坂美から離れていた。
心和(よかった。有坂美くんと話せそう)
心和(あれから有坂美くんの顔を見ると緊張しちゃって、高野先生を説得してくれたこと。お礼言えてない……)
心和(今日は絶対伝えよう)
小さくガッツポーズする心和。
<作業をするコマなど、時間経過>
女子生徒A「成海さん~~」
女子生徒B「有坂美くんが、炊飯会場に来る前にあった自販機のところいきてだってさ」
心和「有坂美くんが?」
心和に話かける女子たちは、顔を見合わせながら企んでいる様子。※心和は気づいていない。
心和(あれ、でも、有坂美くん。さっきまでそこにいた……)
キョロキョロと有坂美を探す心和。
有坂美の姿は見当たらない。※ただタイミングよく洗い場に行っているだけ
女子生徒A「ねっ、必ず伝えてって言われたんだ」
女子生徒B「早くいってあげなよ。炊飯はじまっちゃうよ?」
心和「う、うん」
心和(有坂美くん、どうしたんだろう……)
心和(でも、私も話したいと思ってたし……)
心和は文乃に話かける。
心和「文乃ちゃん、ちょっと有坂美くんに呼ばれたからいってきても平気?」
文乃「有坂美くんに!? もちろん、なんなら戻ってこなくてもいいよ?」
ニコーっと笑って嬉しそうな文乃。
心和はそのまま炊飯場を離れていく。
<時間経過>
炊飯会場で準備をする有坂美。
有坂美を見つけた文乃は、目を丸くさせて詰め寄る。
文乃「え! なんで有坂美くんがここにいるの?」」
有坂美「また辛辣なこというの〜〜」
きゅるんとふざけた様子の有坂美。
文乃「違う違う! だって心和のこと呼び出してたよね?」
ちょっとふざけた様子だった有坂美は、がらりと表情を変える。※真剣な表情。
有坂美「呼び出し? なんのこと?」
文乃「え、だって、心和は有坂美くんによびだされたって……」
有坂美「いつもと違う場所で一人で歩かせるようなことするわけないでしょ……」
有坂美「どこか迷子になりそうで、呼び出しなんてできないよ……」
有坂美は自分で言っててハッとする。
有坂美「場所は!? どこにいくって?」
文乃「聞いてない。有坂美くんだから安心だと思って……」
焦った様子の有坂美。
文乃「まって。今電話してみるから……」
慌ててスマホを出し、心和にかける文乃。
心和は電源が入っておらず繋がらない。文乃は涙目になる。
文乃「そういえば、充電少ないって言ってたぁぁ」
有坂美「文乃ちゃんは先生に報告」
有坂美はすぐに文乃に提案。自分はサッと動いて、心和を探しに行く。
有坂美「俺は心和ちゃんを探しにいくから。文乃ちゃんは誰かと一緒にいて」
文乃「う、うん」
〇場面転換
心和のターン
心和(有坂美くんがいる場所は……)
スマホの地図アプリを見ている心和。
心和「このあたりのはずなんだけど……」
ぷつりとスマホの画面が真っ暗になる。
心和「う、嘘でしょ? このタイミングで充電切れた!?」
辺りを見渡すと、自然が広がっていて炊飯場は見えない。
心和「どうしよう……誰もいなくて迷子になったら……」
怖くなって焦り出す心和。
――パキッ
枝が折れるような音が鳴る。
心和はハッと振り向く。