独占欲強めな不良さんに執着されています。

不良校・桜我学園

「なぁ魅摘。この高校に行かないか?大学付属だから大学受験も必要ないし、強い奴らがウジャウジャいるぞ?受験勉強の時間を武術に回すことだってできる」
中学3年生、夏。
志望校を変えるには遅すぎる時、私・芽郡(めぐん)魅摘(みつ)はお父さんにそう提案された。
「え、もう先生には進路の話もしてあるよ・・・」
「あそこは平凡でつまらないぞ?確かに頭はイイが、平和すぎる!」
私は小さいころから武術を嗜んでいる。
理由は、強いお父さんにあこがれたのと、そのお父さんに勧められたから。
「桜我学園ってあの男子校でしょう?一応共学らしいけど、女の子は1人もないって・・・」
「はは、不良が怖いんだな!俺の娘はそんなに女々しくないだろう?」
・・・なんか失礼なことを言われたような。
「父さん、魅摘は十分可憐で可愛らしい、可愛すぎて苦しいくらいでしょ。・・・見た感じだけど」
途中でお兄ちゃんも参戦してくる。
「まぁ、それで相手を油断させることができるのなら大きな武器だ!・・・ってコトで魅摘、桜我学園に行こう!」
・・・うん、もうこうなったお父さんを止められる人はいない。
お母さんが止めても、無駄だろう。
「お兄ちゃんと同じ高校目指してたんだけど・・・」
「みっ魅摘!そんなコト考えてくれていたの?!・・・いや、でもうちの高校は・・・」
お兄ちゃんが悩み始める。
「・・・駄目!魅摘、桜我学園に行こう」
・・・うん、無理だよね。
「・・・お父さんが、進めるくらいならいい学校なんだよね?じゃあ頑張るよ」
「ホントか?!魅摘、なんていい子なんだ!いい娘を持ったなぁオレは!」
はっはっは~とお父さんが嬉しそうに笑う。
「桜我学園は男ばっかりだけど・・・魅摘なら負けることはないと思う。頑張ってね、魅摘」
「お兄ちゃん・・・桜我学園は寮だけど」
「え!」
ぼそりとそう言えば、お兄ちゃんは急に動揺し始める。
「そんな、長期休暇にしか魅摘に会えないなんて!」
「あきらめろ。寮は安全だし、長期休暇にだけ帰ってきてくれた方が楽しみが増えるだろう」
「・・・そうだけど」
お兄ちゃんはお父さんに窘められ、しょんぼりと肩を落とした。
「大丈夫、まだ半年以上あるよ。受験勉強で部屋に引きこもるかもしれないけど・・・」
申し訳なくてそう言うと、お兄ちゃんは少し寂しそうな顔をしながらも頷いてくれた。
「それに、私が合格するって決まったことじゃないしね!お兄ちゃんの高校は第二志望にするよ」
「魅摘・・・!・・・なんか、複雑だな」
お兄ちゃんは言葉通り複雑そうに顔を顰めて、私の頭を優しく撫でてリビングを出て行った。
「お父さん・・・」
「大丈夫だ、魅摘!魅摘なら絶対合格できるからな!」
「・・・うん、期待にこたえられるように頑張るよ」
じゃあ勉強してくるね、と笑って私もリビングを出て自分の部屋に行く。
さすがにベッドに座るのは嫌なので、ちゃんと椅子に座った。
「どうしよ~」
私は結構自分の強さ自信がある。
でも・・・噂では、繁華街ナンバー1と言われる男の子がいるそう。
なんだか不安だな・・・。
受験勉強もしなきゃいけないけど、身体が鈍らないように鍛錬もしなきゃ・・・。
私は机に肘を置いて頭を抱えながら、口元に笑みを浮かべる。
それは無意識で、私が少なからず桜我学園を楽しみにしている証拠だった。
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