独占欲強めな不良さんに執着されています。
「じゃあ、行ってくるね」
「あぁ!楽しんで来いよ!」
「魅摘、またゴールデンウィークね」
私は無事、桜我学園に合格。
桜我学園の学園長さんからも手紙が届いて、『桜我学園に優秀な女子生徒が入ってきてくれて嬉しい』的なコトが書かれていた。
学園の人がいろいろ手配してくれて、寮の荷物はもう事前に運んである。
「お兄ちゃん、周りの人たちに負けないように頑張るね」
「っうん、頑張って、魅摘」
お兄ちゃんに笑みを向けると、お兄ちゃんは少し躊躇ったあとに、同じように笑みを返してくれた。
・・・無理して、笑わなくてもいいのに。
そうしたら余計悲しく、寂しくなっちゃうのに。
「連絡たくさん取ろうね!」
「あぁ、行ってらっしゃい、魅摘」
最後にお父さんが送ってくれて、私はお母さんの運転する車に乗り込んだ。
「魅摘、寂しくなったらいつでも帰ってくるのよ」
「うん、だから心配はしないでね、お母さん」
「えぇ」
お母さんとはそれだけの会話で、車が発進する。
「何分くらいかかるのかな?」
「車では駅までだからね。そのあとの電車の時間も合わせると1時間くらいかしら」
「早く出て正解だったね」
早く分かれるのは寂しいけど、という言葉は飲み込んで、笑みを浮かべる。
そんな私の顔は見えていないだろうけど、お母さんも笑った気がした。
「・・・さぁ、着いたわよ。・・・行ってらっしゃい、魅摘」
「うん、行ってきます」
私はカバンを持ち、車を出てお母さんに手を振る。
そのまま交通系ICで改札を通り、電車に乗った。
ゴールデンウイークは、少し経てば来る。
だから・・・少し我慢すれば、また会えるんだ。
自分で自分に言い聞かせて、深呼吸をする。
同じクラスの子とか先生とか、いい人だといいな・・・。
私が今までかかわってきた不良たちは、みんな優しかったから。
自分の評価が下がってもいいように、もともと不良というポジションにいて、人を助けていた。
そんな人たちにも憧れていたのだ。
私も、・・・助けられたから。
                                                            
「ふぅ・・・ふふ、楽しみっ」
学園の校門の前で1人、笑う女子生徒がいる。
女子生徒は不良校の制服──女子生徒は彼女だけなので、周りの住人も見たことのない制服だ──を着て。
開いている校門の奥へ、一歩踏み出した。
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