独占欲強めな不良さんに執着されています。
「・・・以上です。みなさんが有意義な学園生活を送れるよう、こちらも頑張るよ」
学園長先生はそう締めくくり、長めの話を終えた。
「教師としてこんなコトは言ってはいけないと分かっているんだけど・・・。でも一応、言っておくね」
学園長先生の無邪気な笑みに、みんなが驚く。
「学校で隠しきれるくらいの喧嘩はOKだ。寮も、次の日にちゃんと学校に来るなら抜け出してくれて構わないよ」
つまり、学園のトップが生徒同士の喧嘩を容認、そして隠蔽するというコト。
「じゃあSクラスから教室に戻るよ。担任のみんなもよろしくね?」
『はいっ学園長先生!』
学園長先生の気さくなお願いに教師陣はそろって返事をする。
学園長先生は普段からこんな感じのようだ。
「では教室に戻りますよ。戻ったら教科書等の配布と寮の説明をしますね」
担任の先生らしき男性は柔らかく微笑んで、手で立つように指示をする。
なんかこの先生こわいかも・・・。
この学園の先生はみんな元ヤンなんだそう。
学園長先生の伝手でこの町の元ヤンだけを教師に選んでいるんだとか。
でもこの先生、やさしい外見と口調をしているのにどこか掴めない。
真っ暗な裏の顔を持っていそうだし、なにより強いだろう。
「ではまず寮の説明ですね」
教室に戻り、先生の説明を聞く。
ちなみに、席は後ろからの成績順なんだそうだ。
これは、頭がいい人の後ろに頭が悪い人がいたら、頭が悪い人がカンニングできてしまうため、らしい。
「クラスは3年間変わりません。入試の成績がクラスと寮ではすべてですからね。成績トップは3年間特別寮になります。寮棟の最上階です」
つまり、入試がすべてだから、以降頑張っても無駄ってことか。
「では次に教科書を・・・」
前から教科書が流れてくる。
「すべてまわりましたか?・・・まだ早いですね。では明日するつもりでしたが、自己紹介をしましょうか」
笑顔でそう言い、先生は一番前に座っていつ男の子に1つ頷いた。
(ゆう)だ。所属は|《ブルー》。1年・・・じゃなくて3年間よろしくな」
悠はちょっとチャラそうな見た目をしている男の子。
ちなみに所属とは、繁華街での強さを表した色だ。
一番強いグループから(ゴールド)(シルバー)(ブラック)(パープル)(レッド)(ブルー)(グリーン)(イエロー)だ。
この中で金~紫が上、赤~黄が下。
つまり悠は下の中だ。
(りん)です。所属は悠と同じ青。よろしくね」
爽やかで胡散臭そうな凛。
「あっ(あや)です・・・、所属は赤ですっ・・・」
一見気弱そうだけど、下の上(おかしいかな?)の彩。
(すい)です。所属は赤。よろしくね」
穏やかそうな彗。
(れい)!所属は紫で彗と幼馴染!」
元気な子犬のような澪。
(そう)。所属は黒。3年間世話になる」
クールではないけど、冷静そうな蒼。
(えん)。所属は黒」
こっちこそクールそうな苑。
(ある)だ。所属は銀、だな」
ちょっと蒼と似ている有、強いんだなぁ・・・。
(こう)だよぉ。所属は金だねぇ」
可愛いとはちょっと違う、危機感を覚えさせる間延びした口調の煌。
先生と同じくらいこわいかも・・・。
「魅摘です。所属はありません」
「おや、では今夜繁華街に行ってはどうでしょう?煌、彼女の実力に合う階級はどうですか?」
「ん~・・・金かなぁ?魅摘、俺より強いよぉ。もしかしたらナンバー1に勝てるかもぉ」
「そうですか・・・煌、魅摘を今夜繁華街に連れて行ってあげてください」
「りょうかぁい。魅摘に手ぇ出す奴は()しちゃうぞぉ」
先生は生徒を呼び捨てにするタイプのようだ。
っていうか先生が生徒に喧嘩を勧めるっていいの?
「おや・・・もう解散ですね。机の上にあるカードキーで寮に入れます。オートロックになっていますからね。では明日からは授業もあるので準備はしておいてください」
ニッコリ笑顔が標準装備の先生がそう言って、私は席を立つ。
荷物片づけたいからね・・・。
「あ、魅摘は少し残ってください」
えー・・・。
なぜか納得したように教室を出ていくクラスメイト達。
ちょ、ちょっと・・・私、高校生女子で先生は20代前半っぽい男性だよ⁈
問題があるんじゃ・・・ないのか。
確かに不良校だったら男女の問題よりも暴力沙汰のほうが問題になりそうだ。
「・・・さて、魅摘」
「はい、先生」
みんなが帰ったのを確認して、話し出す先生。
「ちょっと学園と繁華街について説明しましょう」
あー・・・私が所属なしだからか。
「まず、有名な金の生徒は2人です。魅摘に入会要請が来ている風紀委員のメンバー・・・まぁ、学園の問題児ですね。もう1人は桜我学園の生徒会長。ちなみに、生徒会長は学園長先生の息子さんですね」
そういった後、先生は少し嫌そうな顔をする。
「生徒会長は・・・少し苦手なんですよね。、表立って権力を握るような真似はしませんし、穏やかで彼を尊敬する生徒もたくさんいます。彼はいわゆる裏ボスなんですよ。裏で権力を握り、自分に都合のいいように誘導したりする。そんなところも含めて『憧れの生徒会長』なんですが」
「そうなんですね・・・」
「はい。魅摘が試験を受けに行ったとき、彼はきっといます。繁華街の人間は女性を嫌悪しておますからね、最初は魅摘を受け入れないでしょう。ですが、なにをいわれても真に受けず、耐えてください。それが、合格へのカギとなります。彼にどう接すればいいのか、よく考えてくださいね。・・・話は以上です、今日はゆっくり休んでくださいね」
先生は、言いたいコトはすべて言ったといわんばかりにさっきまでの笑みに戻り、私を促す。
「ありがとうございます」
ちょっとのコトだけど、情報提供してくれて。
「えぇ・・・頑張ってくださいね」
頭を下げた私に、先生は少し困ったように笑った気がした。
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