君と始める最後の恋
「郁ちゃんと類くん、何かあったでしょ」

「え?」

「こうやっていつもの2人を見てきたから今日の空気感がいつもと違うのすぐ分かった。」


本当に沙羅さんは人の感情や表情にすぐに気付ける方だと思う。

今日、着いてからは特に普通にしていたはずなのに、気付かれていると思わなかった。

指摘された事に驚いたのもあるけど、沙羅さん相手には特にどう答えればいいか悩んでしまう。


「…最近、特に先輩の事がわからないんです。何か近付けば近付くほどよくわからなくなって、したくもない喧嘩して。この間も何で怒られたかもわからないし。」


言葉がうまく纏まらなくてよくわからない言葉を並べてしまっている。

ここ数日先輩の事を考えていても、答えなんて出なくてそれを確かめる事すら出来ない。

話そうにもどうやって切り出したら良いかわからない。


「うーん、類くん言葉足らずだし不器用だからな。話す以外で解決策は無いような気がするけど。」

「ですよね、分かってはいるんですけど中々勇気も出なくて、私怖くなっちゃってるのかも知れないです。先輩から気持ちを聞くのが。」


私が先輩に今の気持ちを聞くのは沙羅さんとの事に関して足を踏み込む事になる。そんなの出来るわけ無いし、したくない。

手元の写真を封筒に入れて大事に鞄にしまわせてもらう。


「沙羅さん、写真ありがとうございます。嬉しいです!」


そう笑顔で伝えた時だった。
< 127 / 286 >

この作品をシェア

pagetop