君と始める最後の恋
いつも通りの勤務を終わらせたその日。

高橋さんの言うとおりに周りは私の歓迎会だと言いながらも、お酒を飲める事を喜んでいた。

歓迎会の会場に行く時、私は一ノ瀬先輩に連れられて会場まで向かっている。

一ノ瀬先輩は相変わらずの無表情さで、特に何を言うでもなく歩いている。

私も特に話すことは無いので無言で隣を歩いていると「君、お酒強いの?」と一ノ瀬先輩が話しかけてきた。

突然口を開いたかと思えばそんな質問。


「どうでしょう…、強くはないと思います。」

「ああそう、だったら気をつけなね。営業2課は酒癖悪い奴しか居ないから。」

「へ?」


この時の私は一ノ瀬先輩のこの言葉の意味を何も理解していなかった。






𓂃𓈒𓂂𓏸





「ほらあ!主役グラスの中身減ってないってばあ!」


この声は普段営業2課の補佐事務として立派に支えてくれている高橋さんの声だった。

普段は優しい先輩方が酔うとアルハラをする様になるなんて知りたくなかった。

ある場所では今どき裸踊りしてる人もいるし、ある人は泣きながら何かを話す人もいれば笑いが止まらない人もいる。


「(か、カオスだ…!)」


あまりにも酷い飲み会の風景に目も当てられない。

先輩達に絡まれない様に逃げてしまおうと、こっそり立ち上がり個室のドアを開けてお手洗いの方に歩き出す。

忠告してくれていた一ノ瀬先輩はいつの間にかいないし。

そう思っていると声が聞こえてきて、思わず足を止める。
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