君と始める最後の恋
そんな会話よりも何故か私は先程の電話の相手が気になってしまっていた。

私には間違いなく関係無いのは分かっているんだけど、恋人が居るかとかそんなことに興味を惹かれて我慢出来ずに質問を投げ掛けてしまう。


「一ノ瀬先輩、先程の電話の方は恋人ですか?」

「…何で?」

「何でって、何かそういう感じに見えたので」

「違う、何で君がそんなこと聞いてくんの。」


先輩のほんの少し棘のある言い方に間違えたと思った。

確かに私には関係ないし、踏み込みすぎた質問だった。


「いえ、すみません。興味本位で踏み込みすぎました。」


それだけ言うと一ノ瀬先輩は何も言わない。

少し仲良くなれた気がして、本当にほんの少しの興味本位で聞いてしまった。

でも会社の後輩にそんな踏み込んだ質問されたくないに決まってる。


「…そんな顔しないでよ、面倒臭いな。」

「え?」

「別に怒ってない、俺も気になったから聞いただけ。」


そう言いながらこちらに顔は向けず言っている。

明らかに落ち込んだ私の空気を察したのか、先輩なりにフォローを入れてくれてるらしい。

先輩なら「君が勝手に聞いてきて落ち込まないでよ 」とか言いそうなのに、怒ってないと伝えてくれた。

なんだかんだ意外と優しい所がある。

そこが何か可笑しくて思わず笑ってしまう。


「何。」

「一ノ瀬先輩、優しいです。」

「…うざ。」


それだけ呟いてほんの少し照れたような表情をしたのを私は見逃さなかった。

そして確信する。


────この先輩、ツンデレだ。
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