君と始める最後の恋
先輩の家は初めてじゃないのに、今日が一番ドキドキしてるかも。

家の鍵をガチャガチャと音を立てながら開けて、ドアを開けて私を中に促してくれる。


「本当に良いんですか?明日、仕事ですよ。」

「ここまで来て帰れとか言わないから。いいから早く入りな。」


先輩の言葉に促されるまま中に入る。

相変わらず玄関先から綺麗に整理されているのが分かるお家。

シンプルで無駄な物があまり無い。

中に入って手洗いをしてリビングに入ると、先輩がジャケットを脱いでソファーにぽんと置く。

いつも真っ先に掛けに行くのに。

不思議に思って見ていると「ん」と言いながら軽く腕を広げている。


「…何してるんですか?」

「君がしたいって言ったんでしょ。何忘れてんの。」



『先輩、ぎゅーって抱き締めてくれませんか。』



私のそんなお願いを叶えようとしてくれているらしい。

さっき確かに外だから無理って言われたけど。


「いいんですか?抱きついて。」

「いつまで待たせんの。早く。」


そうやって急かす先輩に嬉しくて思い切り抱きつきに行くと、腕の中に閉じ込めるようにぎゅーっと強く抱き締め返してくれた。

本当落として上げるのが上手な人。

なんだかんだ最後には私のお願いを聞いてくれる。
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