君と始める最後の恋
退勤後、帰る前に資料室に資料を戻して帰ろうとした時だった。

狭い廊下を歩いていると向かいから小川くんの姿が見える。


「桜庭さん。お疲れ様です。」

「あ…、うん。お疲れ様。」


笑顔を取り繕うも上手く笑えていたか自信はない。

早くその場から離れようと小川くんの隣をすれ違った時だった。

少し通り過ぎた時に「郁さん」と声を掛けられて驚いた。

何で名前…。

振り返ると顔を赤くした小川くんがそこにいる。

目を逸らすこと無くまっすぐこっちを向いていた。


「郁さんの事思ったら言わないほうが良いんでしょうけど、言わずに何もせずにこのまま終わるとか俺には無理です。」


流石に察しの悪い私でも分かる、何を言おうとしてるか。


「ま、待って!」

「好きです、郁さん。」


聞いてしまうのが怖かった言葉を、小川くんは真っ直ぐな声ではっきりと言葉にしてしまう。
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