君と始める最後の恋
「いいですけど、珍しいですね?私の所に来て食べるなんて。」

「席、ここしか空いてないから」

「あ。」


確かに、周りを見渡せばどのテーブルもかなり混みあっていて空いてる席は無さそうだ。

「頂きます」と手を合わせて蕎麦に手をつける先輩はなんだか少し可愛らしい。

無言で食べ始めそうなのにちゃんと「頂きます」って言うんだ。

そんな小さな1部分にキュンっと来てしまう。


「(キュン…?)」


いやいや、ギャップ萌えみたいな感じだろう。

何だか最近変な自分に違和感を感じつつも特に気にしないようにする。


「ファイル整理よく出来てるなって部長褒めてたよ。綺麗にまとめられてて分かりやすくなってたって。」

「本当ですか?資料に目を通してるうちに色々考えるようになっちゃって。」

「いい事なんじゃない?」


話を振ってきた割に、ぶっきらぼうに返してくる。

そんな先輩が少し可笑しい。

部長がなんて話をしてきてくれたって事は、一ノ瀬先輩も私の仕事ぶりを多少認めてくれているんだと思う。

ツンデレな先輩は決して素直に褒めてくれないし、言っても認めてくれはしないけど。


「しごでき後輩に第1歩です」

「へぇ、それは頼りになるな。今日から企業の電話、スケジューリング、会議準備とか全部任せていいってことだよね。」

「それは聞いてません、キャパオーバーです」

「本当、最近ようやくコピーの仕方分かったポンコツが何言ってんだか。」


痛い所を突かれてしまってぐうの音も出ない。

大学時代もノートパソコンは使っていたんだけど、中々プリンターとかをパソコンから使わなかったので使い方をよく分かってなかった私はコピー機のエラーを最近まで何度も起こしてしまっていた。
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