君と始める最後の恋
「…本当に好きなんですか、郁さんのこと。」

「好きかどうかは本人にしか言わない。そんな大事な気持ち君に言う必要ない。」

「なんですかそれ」

「1つ言えるのは、離す気無いから早く諦めろ。」


そうはっきりとした牽制をすると小川はそこで少し驚いた表情をした。

俺の発言が意外だったのかもしれない。

言うつもり無かったけど、裏でちょっかい出されるのを気分良く思わない。

それにお人好しで真っ直ぐな彼女は君に好きだと言われてもどんな形が一番傷付けないかってずっとそればっか悩んでしまう。

俺にも頼らずに1人で、見つからない答えをずっと探し求めて。

俺以外の事を考える隙なんて与えたくない。

そんな独占欲が湧いている事に自分で気付いていなかった。


「…そんなカミングアウト俺にして、俺が会社に報告したらどうするんですか。」

「君は言わないよ。郁が大事だから。君もお人好しだし。」


そう言いながら少し笑うと図星なのか何も言い返しては来ない。

手出さないでよ。

郁は他に靡かなくてもほんの少しのきっかけで余計な事に頭を取られていくんだから。



───他の男の事を考えるなんて、そんなことさせない。



醜い独占欲に心が縛られていくのをまだ分かっていない。
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