君と始める最後の恋
────Side 類


ベッドの上、隣には毛布を口元まで被った郁が眠っている。

さっきまで愛し合っていたはずで、疲れたのか終わった途端に眠りについてしまっていた。

俺はベッドの背凭れに背を預けて郁の髪をそっと撫でる。

俺達は基本的に話し合いが少なくて、かなりすれ違っている様な気がする。

郁は案の定、自信も無ければ色々悩んでいた様で、連絡を止めたり普段の可愛らしいお願いをするのをやめたのも全部俺が嫌がるんじゃないかって思っていたらしい。


「本当バカ、俺の事どうやって落としたか忘れたの?あんだけ好きだって迫って来といて、今更じゃん…。」


そう呟く言葉も今回ばかりは彼女の耳に届いていない。

むしろ今日は連絡来るんじゃないかとか期待して焦らされれるようで気がおかしくなりそうだった。

触れるのも無駄に我慢して、そのせいで余裕がなくて優しくなんてしてやれない。

不安なのは、俺のせいか。

今まで沙羅を好きな俺の姿を見せてきておいて、俺が君を好きだという気持ちはあまり出せていない。

きっと0.1すらも伝わってない。


「…もうとっくに、君しか見えてないよ。」


あんだけ沙羅しか好きになれないと思っていたはずなのに、今の俺は悔しいことに郁の事でいっぱいになっている。
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