君と始める最後の恋
「…こんなことなら大学、離れなきゃよかった。当たり前に遠距離受け入れてもらえるって思ってた。」

「そんな話してももう今更でしょ。」


そう言って店を出ようとすると、いつから居たのか類くんがそこに居た。

聞かれてたとは思わなくて心臓が嫌な音を立てている。

それと同時に変な冷や汗も出てきて、どこから聞いていたのか。

私の顔をみるなり類くんは私の腕を引いて胸元まで抱き寄せる。


「たられば語ってる所悪いけど、今更後悔してもあげられないよ。この子だけは」

「…簡単に貰えるなんて思ってないですけど、そもそも郁の気持ち次第なんで。」

「その気持ちすらも渡さないって言ってる。」


類くんの落ち着いた声に胸が締め付けられる。

こんな風に渡さないってはっきり言ってくれる先輩が好きで仕方ない。

もしかしてこれが独占欲?

初めてはっきりと感じられてすごく安心した。

私もこの居場所から離れたくない。


「好きなのはご勝手に。奪えるもんなら奪ってみれば。」


それだけ言うと私に「帰るよ」と呟いて、腕を引いて店を出た。
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