君と始める最後の恋

独り占め

会社から離れて「類くん!」と叫ぶ私の声でようやく類くんの足が止まる。

類くんの様子がおかしい。

こっちを向きはしないで顔を俯かせている。


「…やっぱ無理。」

「え?」

「本当、無理。少しくらいは俺だって大人で居たかったよ。」

「え、類くん?何の話?」


全く読めない会話の内容に問いかけると、類くんは真剣な表情をしてこちらに振り向く。

その表情にドキッとしてしまって、何も言えなくなる。


「…何であいつは俺が知りたい過去の君を知ってて、独り占め出来てたんだろ。本当ムカつく、元カレとか。」

「…類、くん?」

「今君が好きなのは俺だとか、これからの君は俺が独り占めできるとか、そんなん分かってても、過去の君も全部俺のがいい。」


珍しくストレートに言葉を吐き出してる類くん。

私、ずっと不安にさせてた?類くんを。

全くそんな様子見せないから気にしてないって思い込んでた。

だけど今の類くんの表情はすごく苦しそうで、辛そうで。

沙羅さんに片思いしていた時みたいな表情をしている。
< 276 / 286 >

この作品をシェア

pagetop