君と始める最後の恋
「君さ、誰のせいで残業になっているか自覚あるんだよね?」

「え?」


話し掛けられた事にも驚いたが、思ったより長い事見つめてしまっていたせいで一ノ瀬先輩に呆れられる。


「本当、君って影響受けやすいし引きずるよね。」

「…わかります?」

「何で他人の出来事でそこまで気に出来るわけ」


軽く溜息を吐いて、椅子の背凭れに深く背を預けて右手を左肩に置いて首をグルッと回している。

オフィスワークは疲れるのかよくその仕草を見る。

私が何か言葉を返す前にデスクの上にある一ノ瀬先輩のスマホがバイブを揺らす。

一ノ瀬先輩は画面を見るとそのまま通話ボタンをタップして電話に出た。


「もしもし」


電話も奥からうっすら聞こえてくる女の人の声。

すぐに白羽さんだとわかってしまう。

だって今、一ノ瀬先輩の周りの空気感が柔らかくなったから。

他の事は鈍いのに、この話になると急に勘が働く。

察した後、胸が針で刺された様にチクッと痛んだ。

どうしてこんな痛みに合うのか…。

別に電話の相手が白羽さんだったとして、私に何の関係があるの。
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