君と始める最後の恋
「そっか、喜んでもらえて良かったじゃん。…うん、いや、俺は何もしてないから。」


口元には優しく笑みを浮かべているけど、今好きな人とどんな気持ちでお兄さんの話をしてるのか。

白羽さん、本当に一ノ瀬先輩の気持ちに気付いてないの?

私は白羽さんの事何も知らないけどそんなにずっと思われてて気付かないなんてあるんだろうか。

こんなに好意を持った表情と声色を常に見せてきているのに?

恋愛初心者にはどれもわからないことだ。


「…え、お礼?いや、そういうのいいから。…何でそうなんの。」


会話をしながら視線は私の方に向く。


「(え、何で私?)」


一ノ瀬先輩に軽く首を傾げると、眉間に皺が寄っている。

先程まで優しい表情で話していたとは思えない。


「…沙羅、いいって。彼女も急に呼ばれても困るでしょ。…え、ちょっと…!」


一ノ瀬先輩が焦った頃には電話を切られたらしくスマホを耳から離すと溜息を吐いていた。


「相変わらず強引すぎ…。」


そう言いながらも声色から全く嫌だとは思っていないのが伝わる。
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