君と始める最後の恋
一ノ瀬先輩が私の方に向くと「沙羅が、君も一緒に家に連れてこいって言ってる。」なんて衝撃な一言を放つ。


「ええ!?何で!?」

「俺が聞きたいよ、沙羅の考える事はよくわからないから。突発的で強引。」


そう言いながらまたPCの方に向いて、頬杖を付きながらマウスを掴み画面にカーソルを合わせて何度かクリックしている。

沙羅さんと確かに今度お話しようみたいなこと言ったけど、社交辞令だと思っていた。

急展開に頭が追いつかない。


「断る?別に君まで沙羅に振り回される必要はないわけだし。」

「…そうなると一ノ瀬先輩は1人で行くんですか?」

「まあ、そうなるんじゃない」

「だったら一緒に行きます。」


そう返事をした私に少し驚いたのかもう一度顔をこちらに戻した。

だって好きな人とその恋人の所に1人で行かせて、1人で辛い気持ちで帰るんだと思ったらそんなの放っておけないでしょ。

ただのお節介と思われても、私が少しでもその痛みを和らげてあげたい。

烏滸がましい事だなんて分かっているけど、なんだかんだ理由を付けて私が貴方の傍に居たいだけだったのかもしれない。

もうきっとこの感情の答えに私は近付いていて、自分でも気付かない内に引き戻せなくなっていた。


「は?何で」

「私も沙羅さんと話してみたいですし、ご招待頂いたなら行きたいですし。」


理由をそれっぽくつけると、一ノ瀬先輩はそれから少し間を空けて静かに「…そう」とだけ呟いた。
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