君と始める最後の恋
そんな話をした後日、仕事帰り私は一ノ瀬先輩と横並びで歩きながら白羽さんのお宅にお邪魔する事になった。

今日は一ノ瀬先輩のお兄さんもいるらしく、3人で元々お食事会の予定だったらしい。


「(い、いや、私邪魔だな?)」


冷静に考えて勿論そんな気持ちは湧いてきたけど、既に後戻りは出来ない。

手には私が持ってきた手土産はあるけど気に入って頂けるか。

そんな不安を他所に一ノ瀬先輩が話しかけてくる。


「向こうについてからなんだけど」

「はい?」

「一ノ瀬、2人いてややこしいから名前で呼んで。」


思わぬ言葉にすぐに返事が出来なかった。


「(今、何と…?)」


理解が出来てから一気に驚きすぎて動揺した。


「え、いやいや!」

「は、何。そこまで嫌がらなくてもいいでしょ。そのうち沙羅も一ノ瀬になるんだよ。余計ややこしい。」


そう言われてみればそうなんだけど、だからといって名前呼びは少し抵抗ある。

今まで一ノ瀬先輩と呼んでいたのにその呼び名を変える違和感と、名前呼びなんて…!


「類、呼びなよ」

「む、無理です!」

「面倒くさいな…。郁、これなら平等?」

「は!?」


急に名前呼びされて心臓がうるさく鳴る。

そんななんでもない事の様に呼んでいるけど私からしたら先輩の郁呼びの破壊力やばいのですが!?そのお顔とお声で…。ああ、絶対今私顔赤い。

意識すればするほど照れ臭さなどいろいろな感情に襲われた。
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