君と始める最後の恋
「じゃあ、ちょっと夕飯の残り仕上げてくるね。ゆっくりしてて、あ、郁ちゃんは手伝ってくれる?女の子同士で話したいし」


そうやってふわっと笑う白羽さんに「はい」と頷いて鞄を端の方に置かせてもらった。

手を洗って白羽さんの隣に立つ。


「私、ずっと郁ちゃんと話して見たかったんだ。」

「え、私とですか?」

「うん。類くんね、あまり他の人の話とかしないし、愚痴吐いたりとか本当にしないんだけど、この間電話で自分から郁ちゃんの話してきたんだよ。」

「え?」


あまり想像がつかない話に思わず聞き返してしまった。

愚痴を吐かない一ノ瀬先輩が愚痴りたくなるぐらいポンコツとか?

そうだとしたら気まずすぎるけど…。

私の反応に白羽さんがふふっと笑みを零すと話を続けた。


「初めて後輩の指導係になったけど自分は上手く教えれる方でもないし、優しくも出来ないからどう接していいかって相談してきたの。すごく頑張りやだからやる気を削がない教え方をしたいけど、自分には出来ないんじゃないかって。」

「え、そんな。」


一ノ瀬先輩の思わぬ私への評価と、悩みに全く気付かなかった。

初耳だったし、先輩は私のやる気を削ぐ所かかなりやる気を与えてくれる先輩だ。

先輩が指導係で居てくれて良かったと感じる程上手くやってくれているのに。


「いつもあんな感じだろうけど、本当は郁ちゃんのこと可愛くて仕方ないんだろうね。時々電話で郁ちゃんの話するんだよ。悩みだったり、こういうミスしてておかしいとか、笑いながらよく話してる。」


そんなの今聞きたくなかった。

好きかもしれないって疑惑で止まっていた思いがどんどん進んじゃうから。

冷たくても優しい所あるの知ってるし、そういう所が好きだ。

何で人の話しないのに私の話はそんな風にしてくれるんですか。脈なんて無いのに期待させてくるなんてずるいです、先輩。
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