君と始める最後の恋

恋の自覚

そのまま夕飯をご一緒させて頂いて食べ終わる頃には白羽さんの事は沙羅さん、一ノ瀬先輩のお兄さんの事は充さんと呼べるまでに仲良くなっていた。

沙羅さんは話せば話す程本当に素敵な人で一ノ瀬先輩が好きになってしまう理由がよく分かる。


「類、大変でしょ。結構拘り強かったり、妥協とか知らないから。」

「仕事に真剣だなって感じします!一ノ瀬先輩の「類」…!」


一ノ瀬先輩に指摘されて隣を見ると、一ノ瀬先輩と目が合う。

そのルールの事すっかり忘れてしまっていたし、気が抜けていた。

ここに来る前そんな約束していたんだった…!


「る、類…先輩の尊敬出来る所…、えっと…。」


さっきまで意気揚々と話せていたのに急に話せなくなってしまう。

きっと私今顔真っ赤に違いない。

そんな私の様子を沙羅さんが笑い出す。


「やだ、類くん。名前呼び強制にしたの?顔真っ赤で郁ちゃん可愛い。」

「ここで一ノ瀬呼びややこしいでしょ。沙羅も一ノ瀬になるし。てか、何で俺だけ名字呼びなの」

「一ノ瀬先輩は一ノ瀬先輩なので!」

「なにそれ、意味わかんない。」


私の言葉を意味わかんないで一蹴させてしまう。

好きな人の名前はハードル高いんだからあ!

そう叫べたらいいけど言えるわけもなく口を噤む。
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